『子供はわかってあげない』
『大人は判ってくれない』という映画がある。映画好きなら誰でも知っている、仏ヌー
ヴェルヴァーグのフランソワ・トリュフ―監督が撮った珠玉の一作だ。それをモジった
コメディなのか?『南極料理人』、『キツツキと雨』、『おらおらでひとりいぐも』を
撮った沖田修一監督の新作とあって、これは観に行かねばと思い、多忙な時期に自ら首
を絞めるのを覚悟の上で劇場に駆け込んだ。
水泳部に所属する女子高生の美波。絵に描いたような幸せな家族に囲まれ育ってきたが、
実は行方不明の実父がいる。アニメオタク繋がりで意気投合した同級生のもじくんと、
実父探しの冒険をすることに。あっさりと実父は見つかるのだが…。
田島列島の人気同名コミックを実写化したもの。と言ってもコミックを読まない私にと
っては馴染みのないタイトルだ。冒頭に「魔法左官少女 バッファローKOTEKO」とい
うTVアニメが出てきて本作の内容を示す。コミック、アニメ、実写の三段跳びだ。
冒頭のアニメは本筋にしっかりと絡む内容で、断絶した父子の再会という感動の場面で
ありながら、クスクス笑える。このクスクス感が沖田監督作品の一つの特徴と見た。
実の両親が離婚し、母は再婚、義理の弟がいる女子高生が実父に会いに行き…と聞くと、
まずは不良少女の心の闇の噴出か、ドロドロの家族劇かと構えてしまうだろう。ところ
がだ。美波は積極的に父親探しをしようとした訳ではなく、不思議の国のアリスよろし
くあれよあれよという間に、半分巻き込まれた感じで話が進む。本作には悪人もいなけ
れば傷つけ合う人物も出てこない。みんないい人でみんな理解がある。普通に考えると、
ドラマにならないのだ。そして本作は138分もある長尺。にもかかわらず全編通して楽
しめるのは、怪しさ、意外性、絶妙な間、気恥ずかしいほどの善良性、そして日常のあ
るあるがうまく入り混じって進むからだろう。隠し味として小さなミラクルが散りばめ
られているのがたまらない。中でもトヨエツ、いい味出していたなぁ。
『子供はわかってあげない』
2021年/138分/PG12/カラー
監督 : 沖田修一
脚本 : ふじきみつ彦、沖田修一
撮影 : 芦澤明子
美術 : 安宅紀史
音楽 : 牛尾憲輔
出演 : 上白石萌歌、細田佳央太、豊川悦司、千葉雄大、斉藤由貴、古舘寛治 |