映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
人が、他人の人権を無視すること、について。
『それでも夜は明ける』を語る会
『それでも夜は明ける』について語るオンライン・イベントに誘われた。これから
公開される『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』の応援イベントらし
い。ゴスペルを理解する上で黒人差別の歴史認識は必須で、そのために企画された
ものだ。事前に映画を観ておくように言われ(言われなくても観るつもりだったが)、
早速チェック。
NYサラトガに自由黒人として暮らしていたソロモンが、奴隷商人に騙され、12年
もの間南部のプランテーションで奴隷として過ごすことになる。サラトガではバイ
オリニストとして尊厳ある平和な日々を送っていたのに、一日で奈落の底へと突き
落とされてしまった。過酷な労働、貧しい食事、リンチまがいの体罰、サラトガで
暮らす妻子に手紙を出す事すら許されない。失望の日々の中、奴隷反対主義者のカ
ナダ人大工がやって来て、ソロモンは一縷の望みを彼に託す。
黒人奴隷の話は様々な映画に出てくるが、本作は自由黒人が奴隷になるという珍し
い設定。元々奴隷として育った訳ではないため、天国から地獄への落差がとてつも
なく大きい。白人ほどの優遇はないにしても、差別発言を浴びる程度の経験しかな
い私たち有色人種にとって、感情移入しやすい設定かもしれない。しかし最も深く
連想するのは、北朝鮮による拉致問題と、中国で起こっている人権問題、そして、
むかし日本がやった朝鮮人強制労働問題だった。実はこれらの問題、たとえ表面的
に解決しても、傷を癒し心の自由に至るまでの闘いは延々と続く。それを示したの
が本作のエンディングではなかろうか。
問題提示、主人公の葛藤、問題解決後の余韻に込められた更なる課題。うまいなぁ。
できれば昔観たTVドラマ『ルーツ』をもう一度観なおしてみたい。
2014年/ 134分/アメリカ、イギリス
監督 スティーブ・マックイーン
脚本 ジョン・リドリー
撮影 ショーン・ボビット
音楽 ハンス・ジマー
出演 キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ブラッド・ピット