映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、ライブピアノつき映画に感じ入りました。
【シネマ&ピアノ】
無声映画の時代、映画上映はライブだった。セリフや状況説明を活動弁士が語り、
楽隊が音楽を奏でる。1920年代にトーキーが主流になり始めて以降、活動弁士
は活動の場を映画以外に移し、楽団の演奏も次第に減っていった。
活弁は日本独自の文化だけど、ピアノの生伴奏はアメリカにもあって(発祥?)、
30年ぐらい前にアメリカ南部の映画館に行った時、ステージの床からせり上がっ
てくるピアノに興奮したのを思い出す。
現在、活弁士は僅か数人いるだけだ。それでも若い人たちが活弁文化を継承して
いるのは嬉しいし、ずっと絶やさないでほしいと願う。それに対してピアノの生
伴奏をする人は、と言えば…柳下美恵さん一人ではないだろうか。
この度、柳下さんの「シネマ&ピアノ」と言うライブ上映に行ってきた。今回の
上映は、カール・テオ・ドライヤー監督の珍しいコメディ『牧師の未亡人』。
90分近い即興生演奏で、しかも2週間連続だから大変だ。柳下さん、お疲れさま
でした。
舞台はスウェーデンの田舎。主人公には婚約者がいるが、現在無職のため結婚で
きない。ある日、村の教会で新任牧師を募集していた。テストを受け、前任牧師
の未亡人と結婚すれば、牧師の職を得られる。未亡人は老婆だ。すぐに死ぬだろ
うと思った主人公は、テストをパスして未亡人と結婚。婚約者を妹と偽って同居
し始めた。ところが未亡人はなかなか死なない。主人公は殺害計画を立てるが、
誤って婚約者が怪我を負ってしまった。彼女を親身になって介抱する未亡人にい
つしか心導かれ、二人は罪を悔い改めるのだった。
牧師が殺人計画と言う設定はいかがなものかと思うが、最も大切な悔い改めの場
面が感動的で涙腺が緩む。柳下さんのピアノは、出しゃばることなく自然に物語
に乗ってきて、即興演奏のライブ感が絶妙。同じ映画でも繰り返し観たいと思わ
せられた。
1920年/ 80分/スウェーデン/モノクロ/サイレント
監督・脚本 カール・テオドア・ドライヤー
撮影 ゲオー・スネ―フォート
出演 ヒルドゥア・カールベルイ、エイナー・レード、グレータ・アルムロート