映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史から、老舗名画座への感謝とエール。




【名画座・早稲田松竹】


昔、高田馬場から早稲田にかけて、映画館が4つあった。今は早稲田松竹を残すのみ

となり、疲れてふぅ〜っと息継ぎしたくなった時にはここに行くようにしている。私

にとっては最も馴染みのある映画館だ。よく公開時に観逃したものや貴重な作品を上

映しているので、実際には息継ぎどころか息を止める様な緊張感を持って観てしまう

のだけど…。思えば学生時代から40年近くお世話になっていて(と言っても映画を観

るだけ)、20年近く前に一度閉館となった時は、ショックのあまり泣きそうになった。

泣きそうになったのは私だけではなかったらしく、早稲田松竹復活プロジェクトなる

のが発足し、その活動のお蔭もあって早稲田松竹は見事に復活した。入口の前にたむ

ろしている人たちを見ると、気持ちはまるでモノクロ世界がカラーになったように嬉

しかったのを思い出す。その後も内装工事などで何度かの休館はあったが、現在まで

素晴らしい作品を上映し続けてくれている。

大手の劇場では予告編以外にマナーや映画泥棒(最近リニューアルされ、アクション度

が増している)の映像が流れるが、同系列の劇場はどこも同じで飽きてしまった。とこ

ろが名画座ではオリジナルの映像が流れ、中ても早稲田松竹のものはとてもレトロで

面白い。古いヨーロッパの雑誌を切り抜いたような紳士淑女(?)の絵に、思いっきり

アナログな遊園地のアトラクション風音楽。極めつけは「上映中は電源をお切りくだ

さい」の部分が「携帯やPHSの」となっているからたまらない。PHSって…。スマホ

世代は知らないだろうなぁ。

ずっとずっと、100年経ってもこのままの映画館であり続けてほしい。


戻る