映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、米国公的施設を駆使した冒険物語を堪能のようです。




【ナショナル・トレジャー】


コロナや猛暑のストレスがピークに達してしまった。スカッとしたくてアドベン

チャー大作を観ようと本作を選ぶ。実はお気に入りの一本だ。

ロケ地となっている米国国立公文書館、議会図書館、リンカーン記念館、トリニ

ティチャーチなどなど、殆ど行ったことがある。特に公文書館は、私にとってま

るでアドベンチャーだった。以前日本国憲法の映画でロケした事があり、怖ろし

く厳しいセキュリティをパスし、迷路を通り抜けた先の収蔵庫で撮影をしたため、

映画の複雑さが決して大げさでは無い事がよくわかる。


物語は、少年ベンが祖父からテンプル騎士団の財宝の話を聞くところから始まる。

成長し歴史学者となったベンは、ドン・キホーテよろしく仲間と宝探しの冒険に

出る。アドベンチャーものにありがちな構成ではあるが、それを面白くしている

のは、宝探しのヒントが合衆国憲法の裏に書かれている事だ。欲に駆られた仲間

は憲法を盗もうとし、正義漢のベンは憲法を彼らから守るために盗む。正義のた

めとはいえ泥棒は泥棒だから立場は弱い。結局敵からもFBIからも追われる羽目

に。肝腎な第一のヒントは解けたものの、それは次のヒント探しに繋がっていた。

冒頭から時代背景の独立戦争、南北戦争、フリーメイソンの話が出ると、現在の

リンカーン記念館、FBI、公文書館…と続く。夏休みのお友だちには歴史の良い

勉強になりそうだ。ただし、マネをしてはいけません。


頭脳戦を繰り広げる人物のキャラクター設定が良い。特に主人公ベンは、口癖が

「大丈夫か?」。憲法が盗まれそうな危機的状況でも仲間を心配し「大丈夫か?」

と聞く。そんなこと言ってる場合かっ!と突っ込みを入れたくなるのがまた楽し

い。そして優男を演じるニコラス・ケイジの上手いこと。”賢いのにどこかすっ

とぼけた人物”を演らせると、本当にうまいなぁ。


因みにロケで国務省の外観を撮影しようとしたら、巨漢の警備員がNo,Noと怒鳴

りながらこちらを指差し、首を斬るジェスチャーをした。こんな事で首を斬らな

くても…と、そそくさと逃げたのを思い出す。映画のワンシーンみたいだった。




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