映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、問題点も確認しつつ不朽の名作への愛も不朽のようです。




【風と共に去りぬ】


一時期、「世界中のどこかで『風と共に去りぬ』が上映されない日はない」とまで言

われ、洋画ランキングでは長らく1位だった名作。その『風と共に去りぬ』のメラニ

ー役オリビア・デ・ハビラントが亡くなった。本作のメインキャストは殆どが亡くな

って久しいから、まだご存命だったとは、正直驚きを隠せない。享年104才。大往生

と言っていいだろう。


1861年、綿花プランテーション広がるジョージア州タラ。南北戦争という”風”が近

づく中、大富豪の令嬢スカーレットは、思いを寄せるアシュレーがメラニーと結婚す

ると知り、激しい気性を露にする。それを見ていたレットが、情熱的なスカーレット

には自分こそが相応しいと近づいてゆくが、戦争が勃発。懸命に生きようとするスカ

ーレットの前から、全てが”風”と共に去ってゆき…。


スカーレット役は当時まだ無名のヴィヴィアン・リーで、これ以上のはまり役はない

と思えるくらい見事だった。ところが、初見当時14才だった私は、「スカーレットっ

て、なんか…嫌なヤツかも」とも思っていた。なり振り構わず人を傷つけるのが、い

くら戦時下と言えどもちょっと酷い。それに対しデ・ハビラント扮するメラニーは、

夫に思いを寄せる危険な人物スカーレットさえも、愛し受け入れる聖母の様な存在だ。

メラニーが示す愛のお手本が無ければ、14才の私もスカーレットを受け入れることな

どできなかったかもしれない。メラニーが儚さと芯の強さを兼ね備えた女性像で良か

った。スカーレットの美しさと生命力にも魅了されたが、メラニーの品性には敵わな

い。素晴らしい脇役を配したものだと、今になって思う。そしてデ・ハビラントもは

まり役だった。


黒人差別問題で本作がボイコットされると言う悲しい話を耳にした。奴隷制度は史実

として背景にあったもので、本作でのスカーレットと黒人との関係は、寧ろ感動的で

すらある。だけど原作ではアシュレイがKKKに入っていたりするから、やはり批判は

免れないのだろう。


『風と共に去りぬ』
1939年/223分/カラー/アメリカ
製作/デヴィッド・O・セルズニック
監督/ビクター・フレミング
脚本/シドニー・ハワード
原作/マーガレット・ミッチェル
音楽/マックス・スタイナー
出演/ ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲイブル、オリビア・デ・ハビラント、レスリー・ハワード


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