映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、理想の死に方を考えたようです。




映画館で観たい


コロナ禍で映画業界が激変しつつある中、今後は映画を劇場ではなく自宅で観るのが

主流になるだろうと言われている。ネット配信がより便利で安価なため、この流れが

後退することはないだろう。時代の趨勢なのだから受け入れていくしかない。


確かに劇場でやっていない映画も観ることができるし、映画評を書く際に繰り返し観

ることができるメリットは大きい。前向きに前向きに……そう考えながらも、ネット

配信が主流になるのはなんとも淋しい限りだ。


新宿ミラノ座の様な大劇場からアクト・ミニシアターの様な小さな劇場まで、新作も

旧作も存分に味わい、泣いて笑って、世界を広げてくれる大切な居場所。暗闇の中、

雑音を遮断して映画に没頭できる映画館は、状況が変わっても私にとって大切な居場

所であり続ける。


思えば他芸術に比べ歴史の浅い映画の世界において、今までも何度か変革の時代はあ

った。サイレントからトーキーへ、モノクロからカラーへ、スタジオシステムが崩れ、

カメラが屋外に飛び出して行ったり、フィルムがデジタルに取って代わったりと、作

る側の変革がある度に批判的な声があがりながらも、人々は順応していった。同じよ

うに見せる側も順応していくのだろう。ただ、劇場の数は減っても無くなりはしない

だろう。少なくとも私が生きている間は。


ネット配信が主流化したら、映画館という居場所が豊かに与えられていた時代を体験

できたことに感謝しよう。

人生の締めくくりは、ぜひ映画館で迎えたい。スクリーンの前の椅子に深く腰掛け、

大好きな映画を観ながら人生を終えられたら幸せだろうなぁ。最後に観たい映画を選

べるなら、以前にも書いたが、ぜひフレッド・アステアを。♪Heaven, I’m in Hea-

ven〜夢見ごこちで天国へ旅立ちたい。な〜んて勝手に思うが、映画館にとっては、

何ともはた迷惑な夢だ。


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