映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、友人のリストと感想がぴったりだったようです。
もっと評価してほしい映画の話
アメリカ人で映画監督をやっている友人が、Facebookに仕事とは関係ない映画の話を投
稿していた。たぶん気分転換(現実逃避?)したかったのだろう。評論家の採点は低いけど、
個人的に気に入っている作品を10本挙げてみようと言うものだった。
彼が選んだのは、トム・ハンクスとメグ・ライアン共演の『ジョー、満月の島へ行く』、
Mナイト・シャマラン監督の『サイン』、ブラッド・ピットの『ジェシー・ジェームズの
暗殺』、ライアン・ゴスリングの『ラースと、その彼女』、リュック・ベッソン監督の
『ジャンヌ・ダルク』等々。優れた映画のリストとは別物になると前置きしていたが、お
そらくそちらにはテレンス・マリックやクシュシュトフ・キェシロフスキー作品などが入
ってくるだろう。
彼とは映画の趣味が合い、このチョイスにはいちいち納得する。中でも『ラースとその彼
女』は、私も大好きな映画だ。人間関係をうまく持てず、結婚してもいい年齢なのに彼女
さえできないラース。なんと等身大のリアルドールを買って彼女に仕立て…と書くと、完
全に変態だと思われそう。ところがラースは、人形に品のある義姉から服を借りて着せ、
周囲に正式な彼女として紹介する。遂にラースが変人から狂人の域に突入した!と誰もが思
うが、心優しきコミュニティの人々は、あろうことか、人形をラースの彼女として認め、
コミュニティの一員として受け入れる。そうこうするうちに、人形の人気がラースより高
くなって…。
ロングショットで撮られた、ラースが人形依存から離れる儀式が素晴らしい。他愛無い映
像に込められた深い意味が伝わってくる。もう一度母の胎内から生まれ直したようであり、
洗礼を受けて、キリスト教的な意味合いで生まれかわったようでもあった。
私自身の10本をこれから選んでみるが、『ラースと、その彼女』は一番に入れておこう。
『ラースと、その彼女』
2007年/アメリカ/カラー/106分
監督/クレイグ・ガレスピー
撮影/アダム・キンメル
脚本/ナンシー・オリバー
出演/ライアン・ゴスリング、エイミー・モーティマー、パトリシア・クラークソンなど