映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史の友人たちの作品が結んだ大林監督との縁。




隣人のゆくえ


今年の東京国際映画祭では、JAPAN NOW部門で大林宣彦監督のプチ特集として、5本

の作品が上映される。


ショパンの「別れの曲」が忘れられない尾道三部作完結編の『さびしんぼう』(1985年)、

鷲尾いさ子初主演の『野ゆき山ゆき海辺ゆき』(1986年)、原作が山田太一、脚本が市川

森一の『異人たちとの夏』(1988年)、余命3ヶ月の宣告を受けた直後に撮影された『花

筐/HANAGATAMI』(2017年)。これらに加えて最新作の『海辺の映画館 キネマの玉手

箱』がワールド・プレミアとして上映される。未見のこの作品には、個人的に特別な思

いがあり、つい語りたくなってしまった。


私には山口県在住の映像作家の友人がいるのだけれど、彼が2016年に撮影を手伝った映

画『隣人のゆくえ』という、宝物にしたくなるような作品がある。その彼の友人である

サラリーマン監督が下関の梅光学園高校・中学の生徒たちと作った、ミュージカル/サス

ペンス/青春映画だ。驚くのは、映画など作ったこともない生徒たちが、出演、音楽、振

り付け、撮影、編集、美術、広報に至るまで、殆どすべてを担っていること。ゆえに素

人らしい粗さは残っているものの、それも含めた青春映画として十分成り立っている。

忘れられないのは、なんとも透明感漂う歌声と美しくも可愛くもあるバレエシーン。し

かしそれだけの青春映画ではない。ストーリーの流れは途中から暗闇の歴史が開示され、

心に刺さる構成となっている。本作を観た大林宣彦監督がいたく感動し、なんとなんと

!出演者の女の子を新作の主演に抜擢した。これは日本映画史上における、幸せなかわい

い大事件ではないだろうか。

私の友人はと言えば、撮影の指導に加わっていたようだ。エンドロールにしっかり名前

が出ていた。昔から応援している友人だけに、私も自分の事のように嬉しい。


『隣人のゆくえ』
監督/脚本:柴口勲
撮影/録音/音楽/振付/出演/美術/編集/広報… : 梅光学園中学・高校の生徒たち
撮影協力:高松博由樹
武男/宮本信子


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