映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、マカロニ・ウエスタンもおじさんたちと楽しく観ちゃうようだ。




『サッドヒルを掘り返せ』を見る前に


あまり知られていないかもしれないけれど、第31回東京国際映画祭で上映され、映画

好きが狂喜乱舞したドキュメンタリーがある。『サッドヒルを掘り起こせ』だ。

クリント・イーストウッドが主演したマカロニ・ウエスタンの金字塔『続・夕日のガ

ンマン』に出てくる墓場がサッドヒル。とは言え、実際の墓地ではなく、映画用に作

られたセットだった。映画の撮影後、50年もそのまま放置されていたのだけど、熱狂

的なファンがもう一度サッドヒルを蘇らせようと有志を募り、様々な国からファンが

集まる一大イベントとなったのだった。映画はその様子を撮影し、イーストウッドや

音楽担当のエンニオ・モリコーネ、映画の熱狂的なファンだという有名人などのイン

タビューも加えた構成となっている。

サッドヒルは墓場の設定なので、十字架が沢山立てられ、それに自分の名前を刻みた

くなるのはファンの素直な心理だろう。名前を刻んでもらって大喜びしているおじさ

んファンの可愛らしいこと! すっかり少年に戻っていた。でもそこには骨を埋めても

らえませんよ〜。違法ですから。


この映画が新宿の劇場で上映されている。元ネタの『続・夕日のガンマン』を観てお

こうとレンタル屋さんに行き、DVDを借りてきたのだけど…あらららら、クリント・

イーストウッドが出ていないではないか。間違って『続・荒野の用心棒』を借りてし

まったようだ! ジョン・ウェインの西部劇なら全部区別がつくのだけど、マカロニ・

ウエスタンは、タイトルがごっちゃになってしまうことがある。やってしまった!

ともあれ、これも観直しておかなければと思ってはいたので、何十年かぶりに観た。


本作は、しょっぱなから意表を突く展開で飽きさせない。一人の流れ者と対立する二

つのグループの構図は、黒澤の『用心棒』そのものだ。残酷描写があるものの、昨今

の普通の映画の方が余程残酷なシーンを含んでいたりする。そして、抑えておきたい

のは、『夕日のガンマン』でも美術を担当したカルロ・シーミによるセットの素晴ら

しさ。カメラをどこに置いても絵になりそうなのだ。ドラマの舞台として、ワクワク

させる見事なセットにすっかり釘付けになった。


『続・荒野の用心棒』
監督:セルジオ・コルブッチ
出演 : フランコ・ネロ
1966年/イタリア・スペイン合作/92分/カラー


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