映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、東京国際映画祭の主体性に賛同してます。
表現の自由
愛知トリエンナーレにおける「表現の不自由展・その後」の話とは別に、以前より表現の
自由/不自由について考えさせられる事がよくあった。仕事上または個人的に、国内外で反
権力的な内容のものを発信することが多かったためだ。現在関わっている隠れキリシタン
に関する舞台にしても、キリスト像を拝み信仰を表現しただけの行為が死罪に値した話だ。
もっともこの場合は信教の自由、延いては人権の問題なのだけど…。
そんなことを考えながら映画祭の仕事をしていたところ、今年の東京国際映画祭の日本映
画スプラッシュ部門に、なんと『i 新聞記者ードキュメントー』と『れいわ一揆』が選出
された。しかも『i 新聞記者ードキュメントー』が最優秀作品賞を受賞するという快挙。
これは森達也監督の快挙というより、映画祭の快挙と言いたい。審査員は外国人2人、日
本人1人だから比較的自由に選べたと思うが、審査の前段階でこの作品をエントリーした
のは天晴れ。作品を観ていないので(日本映画を選考する立場にないので)反政権的なのか
どうかわからないし、恐らく観客に問題を投げかけて考えさせる手法が執られていること
と推察するが、森監督ご本人が「この作品を選んだプログラミング・ディレクターは、大
きな責任問題に巻き込まれるのでは?」みたいなこと(うろ覚えでごめんなさい! )を仰って
いた。
何しろレッドカーペットを総理大臣や政治家たちが歩くことになっているし、公式カタロ
グの頭には映画祭のチェアマンではなく総理大臣、2ページ目には問題を起こして経済産
業大臣を辞任したS氏がすでに刷り込まれており、グランプリの授賞式では国際審査委員
長のチャン・ツィイー氏を脇に追いやり都知事が賞状を授与するという、インターナショ
ナル性を剥ぎ取ってでも芸術よりお金と権力が絶対的に優先されるイベントなのだ。
そんな枠の中にあっても、純粋に映画を愛し、体力の限界に挑戦しながら優れた映画を応
援するスタッフに拍手!
『i 新聞記者ードキュメントー』
監督: 森達也
出演 : 望月衣塑子
2019年/カラー/113分/新宿ピカデリーなどで公開武男/宮本信子