映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画を愛する人々との一体感と共感。
映写技師
先日、新宿ミラノ座の映写技師だった方にお話を伺う機会があった。ミラノ座の閉館ま
で7年間働いておられた、まだお若い方だった。
フィルムによっては手でずっと2時間脇を抑えて映写しなければならないこともあった
り、何が起こるかわからないから、ずっと付きっ切りでいること、映写技師が減ってき
ていることなど、そのご苦労を知ると同時に映画(館)に対する愛情の深さを感じて嬉し
くなった。建物の解体の時には様子を見に行き、あの大きなスクリーンが切られるのが
とても辛かったと仰った。その時の写真も撮ってあり、それを見せてもらったミラノ座
ラブな私までウルウル泣きそうだった。シートを貰って持ち帰られた話を聞き、「私も
やれば良かった」と、後悔先に立たず。
もう随分前の作品だが、映写技師と映画好き少年の交流を描いた『ニューシネマ・パラ
ダイス』というイタリア映画がある。映画を愛する人たちもそうでない人も、こぞって
銀座の映画館に押しかけ、1年以上のロングランを達成した映画だ。こんなことはあれ
以来あっただろうか?ラストに皆感動し、小さな子から地下足袋履いたおじさんまで
しゃくり上げて泣いていた。私はと言えば、ラストよりもアルフレードおじさんが映写
機にリールをはめ込むシーンが泣けて泣けて仕方ない。映写機の横にアルフレードが立
ち、カメラは上にポジションをとっている。この真上から見下ろすアングルがたまらな
い。観客には、アルフレードと映写機の間に挟まれるようにまあるいリールが見える。
アルフレードがリールをよっこいしょと立て上げると、リールで隠れていた小さなトト
の笑顔※が見えてくる。アルフレードと映写機に挟まれたトト。それはそれは幸せな瞬
間だろう。誰が幸せか…見ている私が 幸せになった。エンニオ・モリコーネの音楽があ
まりに素晴らしくて、勿論CDも購入。
『ニューシネマ・パラダイス』
1988年/イタリア
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
出演 フィリップ・ノワレ(アルフレード)
ジャック・ペラン(大人トト)
サルヴァトーレ・カシオ(子どもトト)
音楽 エンニオ・モリコーネ
※筆者が後で確認するとトトの表情は真剣だったんだけど、観た時、そう見えたそうです。