映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、お馴染みのクリスマス映画なのに新鮮な再発見





クリスマスのSF?映画


毎年クリスマスのシーズンになると、アメリカのTVで放送される映画がある。前回も

リストに挙げた『素晴らしき哉、人生!』だ。クリスマスが近づいている今日、久しぶ

りにDVDを引っ張り出して本作を観返してみた。害のない無難な良い映画という記憶

しかなかったのだけど、見直していきなり「おおっ!」と新鮮な驚きがあった。

何人かの人たちが、自殺しようとする主人公ジョージのために助けを願って神に祈る。

町の風景に被せて祈りの言葉が続くのだけど、まず町の住民や友人から始まり、彼を

育てた母親、苦労を共にしたであろう妻、そして最後に無条件でパパを愛している幼

い子どもの「神様パパを助けて」で終わる。これはたまらない。ずるいなぁこの流れ。

観ているものまで「神様、この子のパパを助けてやって〜」という気持ちになるでは

ないか!

そしていきなりカメラは宇宙に飛び(!!!)、大きく回転する地球(?)を通り越して銀河の

彼方で光り輝く星たちの会話が始まる。神様と天使たちだ。下界の祈りに応えるべく

一人の天使を送ることになるのだけど、そこで選ばれたのが、なんと翼のない二級天

使。ミッションを成し遂げれば晴れて翼を持つ一級天使に昇格できると言う。これは

SFか?サイエンス・フィクション?スペース・ファンタジー?この驚きは新鮮だった。

以前観た時には気付かなかったけど…。この翼のない天使、IQが低い設定になってい

て、ジョージを助ける時にも奇想天外な方法を取る。コメディの名匠フランク・キャ

プラらしくて楽しいなぁ。

この映画は公開当時まったくヒットせず、放映料が安かったために何度もTV放送され、

次第に人気が出てきたらしい。この映画がコケて大変だったキャプラにも、神様は二

級天使を送ったのかもしれないなぁ。


『素晴らしき哉、人生!』
1946年/アメリカ/130分/モノクロ
監督 : フランク・キャプラ
原作 : フィリップ・ドーレン・スターン「The Greatest Gift」
出演 : ジェームズ・スチュアート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア
音楽 : ディミトリ・ティオムキン


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