12/10のしゅちょう
            文は田島薫

(チェリノブイリからのメッセージ、について


昨日2003年制作の「チェリノブイリ・ハート」と5年後の2008年制作の「ホワイト・

ホース」ってドキュメンタリー映画をDVDで観た。

チェルノブイリ原発事故の16年後に被爆の影響を受けた子供たちの健康被害を取材し

た記録と、さらに5年後に幼児期に被爆した青年が住んでいた爆心から3キロの場所へ

再訪問する記録だ。

前者の子供たちの多くは甲状腺にがんが発症してたり、肢体が奇形になってたり内臓

や脳の一部が大きく瘤状に体の外に飛び出てたりして、ベッドで寝たきりの者も多い。

後者の青年も外見は元気そうに見えてたのに、撮影終了後の同じ年内に死んだそうだ。

事故当時はその影響の大きさについての認識が不明だったのか過小の報告しかなかっ

たようだけど、事故直後に60万人の作業員が片付けに入り、ドキュメンタリー制作時

にすでにその中の1万3千人が死んでるそうだ(死者総数では2004年で98万5千人!)。

施設そのものも、速やかにコンクリートで覆った、ってことが福島の時よりも評価さ

れてるようだけど、それでも爆発時190トンもの放射能が拡散し、封じられた中には

膨大な核物質がそのままで、亀裂から地下水に染み出ているし、覆うコンクリートも

傷み16年後のその時点でも屋根部分が落下しそうなんだと言うからさらに16年経った

今はさらに危険な状態だろう。

そういう前例があり、このドキュメンタリーは国連でも公開されたそうなんで、各国

に原発の危険性はよく認識されてたはずなのに、わが国の福島原発事故が起きた。

現在も浄化処理しても残る放射能汚染水が90万トンもあり、それが増え続けてる現実

や、膨大な量の放射性残土の放置や、事故がなくても原発稼動すればどんどん増え続

ける核廃棄物の処理計画は全くないまま各地の原発再稼動していいもんだろうか。

このドキュメンタリーには、福島原発事故直後の2012年にトルコの詩人の詩を使った

主に日本に向けられたメッセージを加えられていて、日本近海の海も地球の海そのも

のだ、って確認と復興への好意的なエールが送られてるのに、わが国のリーダーは東

京オリンピックやら経済成長やらだけに励んでるように見えるんだけど、大丈夫なん

だろうか。

新しい超近代的ビルを沢山建てて、超ハイテク新車が沢山走り回っても、もし一度で

も、予想外の核物質拡散などが起こればそれらや人々の生活スタイルなどは全く無意

味なモノになってしまうはずなのだから。


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