●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、新しい知識を仕入れたようです。



私戦予備および陰謀罪


最近、驚いたというか、呆れたというか、ついにというか、まったく不可解なニュースが

あった。

26歳の北大生がシリアに渡航し、イスラム国でイスラム過激派組織に加わり、戦闘員と

して働く計画をしたという話。

本人は北海道大学に在籍し、現在休学中。就職活動がうまくいかず、将来に失望し、自殺

まで考えるほど自暴自棄になっていたらしい。どうせ失う命なら日本でなくイスラム国で

・・・さらに戦争に加わり人を殺してみたいと・・・

『青年よ、大志を抱け』の教えにこれを壮大な計画と勘違い?

もちろん、本人はイスラム教徒ではないし、何の思想性も使命感もない。

短絡的で、ひょいと現実と夢想の境界を飛び越えて、火薬も血も臭わない仮想現実を夢見

ているのだろう。それは多分にゲーム的であり、自由社会で育ち極限状態を知らない甘さ

が透けて見える。

秋葉原の古書店で、まるでパート募集のように「勤務地」シリアの募集広告が張られてい

たというのも考えさせられた 日常何気ない身近な場所に危険な落とし穴が潜んでいる。

何事もグローバル化!グローバル化! と声高に云われ、日本にはない民族主義も、もう

他人事ではなく巻き込まれてしまうのかもしれない。

ネットは世界を駆け巡り、情報ばかり詰め込んだ頭でっかちの夢想が、何の実体験もなく

興味本位だけで、ふっと動き出してしまう危険。

老人の『いまどきの若者は・・・』で始まる繰り言はいつの世にもあるといわれるけれど、

やっぱり『まったく何を考えているのやら・・・』とため息交じりの決まり文句で締める

しかない。

さて、逮捕された北大生は刑法の「私戦予備および陰謀罪」というのに問われるのだそう

だ。

こんな罪条があるなんて、初めて聞いた。

我が家では早速夫婦喧嘩に適用している。


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