●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、ストレス軽減の技あみ出したようです。


“もどき”で乗り切る


食品の偽装問題の報道では、和牛もどき、伊勢エビもどきという風に“もどき”という言葉

が、似て非なるものとして揶揄を込めていわれたものだ。そのたびにペンネームを“一葉も

どき”とした私は首を竦めた。

やっぱりというべきか、“もどき”とはなんと曖昧で胡散臭い言葉だろう。

話は変わるが、去年暮れ私は肺炎もどきを患った。

私が“肺炎もどき”と命名したのはこうだ。

11月に私は咳、喉、鼻、熱、すべて出揃い、まったく体が使いものにならなくなり、近所

の開業医で気管支炎と診断され、薬を飲み続けひたすら養生に努めた。

体力低下の兆候はあって、9月からパソコンの買い替えの失敗でパソコン回復に奔走し、秋

の行事や旅行もいくつか入って、私にしてはかなりの過密スケジュールだった。それらが一

気に風邪となって現れた。

症状は重く、風邪は夫にも移って、二人とも青息吐息。

そのうち糖尿病持ちの夫は手にしびれが出たという。すわ! 脳梗塞か? と、すぐ緊急外

来へ。幸い検査結果は何でもなくその日のうちに帰された。今度は付き添っていって行った

私が38度の高熱が出る。胸がひたすら苦しい。何? この全身倦怠感は? こんどは私が

大病院の緊急外来へいく羽目になった。

レントゲン写真を見ながら医師は肺炎ではないと思うけどな〜と首を傾げる。私はどっちや

ねん! はっきりせい! イライラと心の中で叫ぶ。この頃私はやたらとイライラしていた。 

そして結局CTを撮ることになった。

その結果は、あなたは肺炎でした、でも今は治りかけです、すでにたくさんの薬を飲んでい

たので、薬はだしません、体力の回復をはかって自力で治しましょう、という。

いつのまにか肺炎になっていたのだ。え〜、肺炎ってこんなに簡単になるの? それからは

心が沈む一方だった。

そこに泣き面に蜂、弱り目に祟り目で、12月になって義姉が長いアメリカ暮らしにピリオ

ドを打って日本で暮らすといって帰ってきた。

それからが大変。病み上がりの身に年末年始でバタバタしているホテルを探し、今後を話し

合い、大変な心身の消耗を伴うストレス続きだった。

そこで私は物事を断定せず、この倦怠感は肺炎もどき、鬱もどきのせいだと言い聞かせ、や

り過ごすことに決めた。

白黒はっきりさせる潔さよりも適当な曖昧さの中に身を置く“もどき”精神で重圧から逃れ

たのであった。

これからも食品偽装のように高度なだましのテクニックで乗り切っていこう。


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