6/17のしゅちょう 文は田島薫
(相手への尊敬について)
きのうぼーっと新聞を開いてたら、「相手の誇りを見逃すな」ってタイトルが目に入り、
シャネルの社長が文を書いてて、私はファッションブランドには興味はないし、その営
業法などに反感すら感じてるぐらいなもんで、うまいこと言って人を丸め込もう、って
魂胆なんだろう、などと思いながら気楽に読んでたら、丸め込まれてしまった、と言う
か、社長は、本気で、ここには否定できない真実がある気がして、思わず感じ入ってし
まったんでちょっとご紹介を。
社長は東京銀座にビルを建てる時、日本の建設会社を決めすべてまかせたんだけど、専
門家ではない自分も責任者として技術的な面をなんとか理解して、自分なりの意見も言
いたい、って考え、現場で働いてる人には迷惑なこともあったかもしれないけど、鉄骨
の段階から、予定のゆるす限り週2〜3回、1日3回、ヘルメットと命綱つけて恐い高い
ところまで上がり、「これはどうなってるの?」などと質問したりしながら完成までに
300回ぐらい通った。ある日の夜中、鉄骨の取りつけ作業する「とび職」という専門職
の若者たちが仕事を終えて朝の5時ごろに下りてきてお茶を飲んでる中に入れてもらっ
た時、彼らが「今夜やった作業は良かった思ってたよりスムーズに進んだな」と話して
るのを聞き、若者達が強い誇りを持って自分たちの仕事をしてることに心打たれた。自
分はビルを建てるリーダーとしての責任があり、この専門職の若者たちは確かな技で鉄
骨を組む責任がある、自分の力によって立つ仕事はひとつひとつが対等だなあ、と、誰
とどんな仕事をする時もその人の誇りをきちんと認めることを忘れてはならない、と。
みんなが緊張感を持って仕事をするためにと、自分が無理を言って常識外の建築期限を
提示したせいで、かなり複雑な仕掛けのビルは14〜5ヶ月の驚異的な速さで完成できた。
過程で日本の建築技術や伝統に感嘆しつつ、それまでビルは機械が建てるものだと自分
が勘違いしてたこともよくわかった、と。
尊敬の気持ちから、自分は、中央通り沿いのビルの壁に建築に関係した自社社員、建築
家、建設会社全員、空調機納入会社の方や交通整理の方も含め約2,500人全ての名を刻
印させていただいた、と。お子さん、お孫さんにも誇りを伝えられたらと持ちかけた時
建設会社長は涙した、と。
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