8/27のしゅちょう             文は田島薫

田原総一朗はえらい)

色々な意見が錯綜する政治ジャーナリズムの世界で、私のような専門部外者があれこ

れ言っても説得力はないとは思うし、どんな立場のジャーナリストにも必ず批判者が

いるもんだけど、この人は信用できるなあ、って感じさせる数少ないジャーナリスト

のひとりが田原総一朗だ。

人間や世界に対する好奇心と直感力と努力に裏打ちされた先見性、公平性を持って、

時代や状況で変わり、知らずにその渦に巻き込まれて反論できなくなるような大勢の

意見の潮流にも、時にはただひとりでも声をあげて意見を言える無心さ。

こう言うと、彼を祀り上げて盲目的に従うようなことを勧めてる、って取られては困

るんであって、彼の発言が統べて正しいもんだ、って誉めてるわけではなくて、その

どんな状況の中でも自分が正しいと思うことを、はっきり表明して行くことを諦めな

い態度のことを誉めてるのだ。

どんな人でも、たいてい自分の感じたり考えたりしたことは正しいと思うのはふつう

だろうし、それを状況が許せばだれでも主張したり怒ったりすることはするだろうけ

ど、それがそうとうの論戦を張られた状況でも、それができるということは、それだ

けの自信を裏付ける勉強が必要なはずで、それをやってるのが彼なのだ。

で、えらいのは、それで尊大になって、反論を一切うけつけないとか、反論に感情的

になって自説を守ろうとするようなことは全くなく、その反論の根拠を瞬時に見極め

て、その論点の違いなどを指摘して、共通の位置に戻したり、わからない時は、自分

はわからないからと、わかるように説明を求めたり、ってことを、ごく素直にする、

こういった場面は「朝まで生テレビ」ではおなじみなのだ。

で、その政治ジャーナリストとしての仕事が本気なんだなあ、って感じさせる別の面

は、どうも、彼は日常生活の些事にうといらしい、ってことで、自分の服や料理や収

入などについて女房まかせで全く自分では関知してないそうだ。

こういったもんが大好きで常にそんなことに気を使ってるようでは、けっきょくは趣

味人にしかなれないのかも。もっとも趣味人は生活を楽しむ生き方で、芸術の元とも

言え、どっちもやれた偉人もいるし、私は趣味人にもなれないんだけど。




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