きょうのしゅちょう             文は田島薫

(政治家のジョークについて)

就任してから9日しか経ってない経済産業相が、失言を問題視され辞任した。

福島原発周辺を視察した後、現地は「死のまちだった」と表現し、現地に帰る希望を

持つ避難住民の心を傷つけたとかで、新首相から厳重訂正を求められ謝罪。なお、記

者との非公式な懇談で、現地で着てた服の袖を記者にこすりつけて、「放射能つけち

ゃうぞ」って言ったことが、避難住民の差別を助長する、って、与野党、マスコミこ

ぞって重大視され糾弾された結果、辞任を決意したと。

マスコミの興味本意報道は多少仕方ない部分もあるのかもしれないんだけど、それに

してもそれにすぐ便乗して、政治家として以前の人格自体に問題がある、などと鬼の

首取ったように非難発言する政治家。みんなが批判してるんだから、私も、って安心

したように大げさに批判する評論家たち。


しかし、この程度の発言がそれほど重大な失言と言えるんだろうか。

「死のまち」って表現のどこに住民を傷つける悪意の要素があるんだろう。

現実に放射能によって住むことができなくなり住民が全員脱出したまち、それは現時

点の事実であり、産業界と政界の失策によってその結果を生んだわけで、その言葉を

安全性をふくむ言葉で表現しようが、あえて感想を表現しなかろうが、それでいい、

ってことにはならないわけで、ま、「永遠に帰ることのできないまち」ってニュアン

スで聞こえるので、訂正していただきたい、ってぐらいの話じゃないのか。ああ、そ

うですね、ちょっと表現がよくないかもしれないんで訂正いたします、ってだけの。

それにもうひとつの発言についての騒ぎはもっと馬鹿馬鹿しい。

ざっくばらんな記者との非公式な懇談で、軽い冗談を言っただけのことじゃないのか。

そりゃ、たとえば、普通に生活している非難住民の衣服をこすりつけて同じことを言

ったら、それは差別になるだろうけど、そうじゃないわけで、でも、いくら冗談でも、

悲惨な生活を強いられてる住民が聞いたら不愉快だろう、って言えば、その通りなの

かもしれない、現に、マスコミは、わざわざ伝えなくてもいいそれを、避難住民に、

大臣がこんなこと言ってます、いかがです?、って聞いて、その非難の主旨を理解し

た非難住民は同じような怒りの反応を示すいわば誘導尋問し、いらない不愉快を押し

つけてるのだ。

そんなこと言うと、避難住民の苦しみを理解していれば、そんなふざけたことは言え

るはずがないのだから、それをしてしまう不適格な政治家をきっちり峻別し、排除す

る必要があるのだ、ってようなことを非難発言者は言うのかもしれない。

しかし、冗談、ってものには必ず不合理やふざけた部分があるものだし、悲惨な情況

でこそそれが人々の心をリラックスさせる力も持つものなのだから、もう少し寛容で

あってもいいんじゃないだろうか。こんな些末なことで次々大臣を辞任させてると、

思ってることは決して発言しない無口で陰険な政治家ばかり残っちゃうのでは。




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