12/14のしゅちょう             文は田島薫

(足るを知る者の幸せについて)

世の中不景気になって、仕事が減ったり、収入が減ったりで心細そうで、そのへん歩い

てる人もたいてい生活の大変さを嘆く人ばっかりで、先日は公務員のボーナスが何パー

セントかカットされちゃったとかで、公務員が嘆いてたけど、そりゃ民間大手よりは少

ないとは言え、民間でも中小零細なら、ボーナスが全く出ないどころかギリギリの給料

までカットされたりするとこの方が多いというのに、70万近くもらえても、まだ不平言

ってたり、倒産寸前で自分たちの会社の営業のマイナスを国民の税金で埋めて立て直さ

なけりゃならなくなったJALなどじゃ、企業年金の給付額のカットを受け入れて欲しい

との政府からの要望に会い、今の世の中、年金などほとんどもらえない人々も多くいる

中、もしカットされたとしても一般の年金給付額とくらべてもまだ相当多い額なんだし

いいんじゃないのかって私などが思っても、社長が頭下げて頼んでも、多くのOBたち

が、自分らの金だ、ってがんとして譲ろうとしない、など、世の中の人々の自己中と不

均等もずいぶん拡大したもんだと感じるこのごろだ。

そんな中、テレビでひとりのホームレスが自転車の前後に空き缶でぱんぱんのでかいビ

ニール袋をこれ以上は無理ってぐらい極限まで何個もくくりつけて走ってる朝の映像が

出た。彼はそれを売って生活をしてる男で、夜通し10何時間も空き缶集めをして、業者

に売りに行くところだった。さて、いくらになるんだろう、って男も私も思ってると、

あんだけの量なのにわずか1700円だって、男はがっかりしてるかと思いきや、大喜びし

てて、業者とふたりで、近来ない大稼ぎだ、などと声上げてる。金を大事そうに受け取

った彼は軽やかにペダルを踏んで帰りながらカメラに向かってピースサインをした。

彼の住まいはどっかの道のはずれにあって、段ボールかなにかで中でやっと寝られるだ

けといった究極のコンパクトさでできてるんだけど、防寒対策は大丈夫そうにきちんと

造られたもんのように見える。その「自宅」の前で100円ショップでまとめ買いしたと

言うインスタントラーメンのひとつをなべに入れて調理すると、具の何にも入ってない

それを、実に幸せそうな表情ですすった。

で、おどろいたことに、彼は別のホームレスたちのために、ボランティア団体といっし

ょになって、あたたかいお茶を配るような活動をしてるのだ。それを終えた彼はなんだ

か充実感と少しの誇りを感じたような表情で自転車で元気に闇の中へ帰って行った。





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