8/8の主張             文は田島薫



(新しい歴史教科書について)

新しい歴史教科書を作る会の教科書が各地で少しづつ採用され出して来た。

かつての戦争を正当化し、日本の軍国主義的傾向を助長する教科書だって、批判

されてたんだけど、実際にそれを手にとって読んでみると、特に過激に軍国主義

を宣伝してるようには見えないし、記述だって一応の事実は言ってて、別に普通

じゃないか、問題もないでしょ、って思わせる。


ところが、よく見て冷静に検証してみると、大きな問題を抱えているのだ。


それは何かといえば、我が国が起こした日中戦争、太平洋戦争に対する加害意識

が恐ろしく欠落していて、それが、時代の流れの中の仕方のない必然だった、って

ような表現になってるところだ。

しかも、何気ないような巧妙な表現で、資源確保が目的だった日中戦争から東南ア

ジアへの南下侵略政策が、西欧の植民地からのアジアの解放がなされた、ってこと

をわざわざ強調してるところだ。

それに、植民地政策で発展した西欧と同じやり方で富を略奪しようとした我が国は

結果として、他国や自国民の数百万(間接的には第二次世界大戦の犠牲者は6千万

人と言われている)もの命を奪ってしまった事実を過小表現してるところだ。


事実を一応羅列してるからいいだろう、悲惨な記述をわざわざ強調しなくても、

気持よく自国の歴史のプラスの面を学んでもらうだけでいいじゃないか、って

安易に考えてる人々によって作られた教科書なのだ。


これによってどういう弊害があるか、っていうと、言うまでもない、過去の戦争を

起こしたわが国にもそれなりの仕方ない理由があって、結果的に周辺諸国に利益を

もたらした面がある、って控えめかも知れないが言ってるわけだから、それから学

んだ子供が、戦争はそれほど悪いことではないな、って受け取ってしまう危険だ。

歴史を学ぶ一番大切な目的、人々の過去の過ちをはっきり認識し、それを繰り返さ

ないようにする、ってことが抜け落ちた馬鹿げた欠陥教科書なのだ。




戻る