●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、本調子に戻るのに少し時間がいるのかも。
老化現象
老いは忍び寄るものだとばかり思っていたが、私の場合急激にやってきた。
思い返せば、昨年、家の建て替えのため仮住まいのマンションに移ってからだ
んだん気持ちが萎えたのだった。
初めてのマンション暮らしは閉塞感が強かった。庭がないし、部屋は狭いし、
段ボールだらけだし、朝日はあたるが午後になると陽は陰るし、目に入るのは
空ばかり。
折しも世はコロナのため外出自粛、友人との交流も電話やメールだけとなり、
私は孤立感で一杯だった。
そして次第に近所を歩くだけと活動範囲も狭くなった。
そういえばある医事評論家が言っていた。”年寄りはコロナを恐れるより外出
自粛による体力低下や認知機能の低下の方を恐れよ”と。
その通りだった。
今、晴れて家が出来上がり、娘一家と暮らすようになったのだが、新しい家で
右往左往。慣れないのだ。とにかく私は探し物が多くなり、おまけに言葉もあ
れ、これ、それ、ばかりで単語が出てこない。
新聞の川柳欄で“老夫婦 あれ・これ・それ・で 話し終え”というのがあっ
たが、笑えない。
まさに自分のことなのだ。
長年連れ添った夫婦なら、あ・うんの呼吸で分かり合えるのだろうが、私の場
合同居したばかりの娘なのでそうはいかない。
「お母さん、ちゃんと言ってよ」いつも叱られる始末。
先が思いやられる。