●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの家であった不審状況の原因は。



なぁ〜んだ


短い冬の日はすでにとっぷりくれ、早めの夕ご飯を食べると長い夜がやってくる。

一人暮らしにまだ慣れない私にはつらい季節だ。

その日、夕食を済ませた8時頃、時間つぶしに友人とケータイでおしゃべりをし

ていた。

おや、なんだか、外が騒がしい。人の声のような、唸るような。

気になったが、きっと家の前の通行人の会話だろうと無視しておしゃべりに興じた。

それにしても、長い、なんだろう、まだ声が続いている、と思っていたら、そのう

ち止んだ。そしてまもなく、友人との電話を切ってキッチンの後片付けをしてから、

念のため外を確かめた。

あっと驚いた。玄関先が濡れている。

えっ、雨? だって空には星が出てといるのに?

ありえない。ではこの水は何? 誰が撒いたの? 侵入者? チャイムはならなか

ったけど。

ぞっとした。

そこで意を決し、懐中電灯を持って恐る恐る家の周りをぐるりと誰かが潜んではい

ないか点検した。が、異常なし。

ではあの水は何だろう、誰かが撒いたとしか思えない。電話中の騒音と何か関係で

も…

考えるとドキドキが止まらない。その夜まんじりともせず夜を明かした。

翌日、ゴミ出しで隣の奥さんと顔を合わせたので聞いてみた。

「夕べ、なんか騒がしい人の声のようなもの聞きませんでした?」

「ああ、あれね。お宅の玄関先で猫が喧嘩してたので、うるさかったので私、水を

ぶっかけてやったの」

なぁ〜んだ、そうだったのか。これですべて解決。


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