映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、魅力的なヨセフに心奪われたようです





クリスマスの降誕劇


12月に入り、あちこちの街路樹がイルミネーションで賑わっている。クリスマスが

近づいているんだなぁ…と言うことで、キリストの降誕劇を映画化した『マリア』を

観た。

今まで見たことのないタイプの降誕劇で、意外にもロードムービーとして楽しめる。

通常の降誕劇同様、まず救い主が生まれるとのお告げに怯えたエルサレムのヘロデ王

が、その赤子を探して殺すために人口調査を実施する。一方、天使ガブリエルから

「救い主を身ごもる」と告知されたマリアが、当時婚約者だったヨセフと共に彼の故

郷ベツレヘムへと人口調査のための旅をする。ベツレヘムには彼らのための宿はなく、

マリアは家畜小屋で出産を迎えた。ヘロデの魔の手が伸びようとしていたが…。

基本のストーリーは聖書に基づくもので、イエス・キリストの誕生場面が厳かに描か

れているのだけど、ナザレからベツレヘムまでの旅の様子は聖書には書かれていない

部分だ。臨月のマリアにとって険しい山や砂漠をロバで旅するのは危険極まりない。

その道中、ヨセフはマリアを思いやり守りながらベツレヘムを目指す。その姿が切な

くて暖かくて、感情移入するあまり涙腺が崩壊した観客が沢山いたことだろう。

映画のタイトルは『マリア』だけど、ヨセフの物語と言っても良いくらい、ヨセフに

スポットが当たっていた。聖書にないエピソードであるにもかかわらず、きっとヨセ

フはこんな人物だったのだろうと、誰もが納得するであろう素晴らしい人物描写だっ

た。演じたのはオスカー・アイザック。2013年にカンヌでグランプリを受賞したコー

エン兄弟の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』に主演していた。

劇中すばらしい歌とギター演奏を披露していたが、それもそのはず、ジュリアード音

楽院を出た本物の音楽家だった。いい役者だなぁ。


『マリア』
2006年/100分/カラー
監督 : キャサリン・ハードウィック
脚本:マイク・リッチ
出演 : ケイシャ・キャッスル=ヒューズ(マリア)、オスカー・アイザック(ヨセフ)


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