映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
何年か前、わが国でも似たような「事件」がありました。




ビッグアイズ


前回『天才作家の妻』のことに触れながら、ティム・バートンの『ビッグ・アイズ』を

思い出した。『天才作家の妻』がゴースト・ライターの話なら、こちらはゴースト・ペ

インターの話。妻の描いた作品を夫の著作物として世に出すという点で共通している。


1960年代に人気を博した、大きな目の子どもの絵画シリーズがある。マーガレット・キ

ーンという画家の作品で、ティム・バートンは多大な影響を受けたようだ。


マーガレットの夫ウォルターも画家だけど、絵の才能より商才に長けた人物だった。彼

はそれまで高額で売買され、額縁に入れて飾られていた絵画作品というものを、大量コ

ピーして安価で売るという、ある意味美術品の価値を落とし込む暴挙に出た。ところが

この方法が功を奏し、絵が飛ぶように売れて大成功を収めるのだ。喜ぶマーガレット。

しかし夫は作者が自分だと偽っていたことが判明する。ゴースト・ペインターとして自

分の存在を消し、娘にさえも嘘をつき続けるマーガレット。そんな生活に耐えられず、

カミングアウトを決心するが、夫はそれを許さない。遂に裁判に持ち込んで全面対決す

ることになった。

誰の目にも明らかに夫が悪い。しかも演じるのがいかにも胡散臭いクリストフ・ヴァル

ツだから、とても分かり易く彼が悪い。終盤の裁判劇では、その悪あがきの醜悪さに笑

いが込み上げてくる程だ。ただ、観終わった後に思う。ゴースト・ペインターをやって

いたマーガレットも、ずっと真実を語らなかったという点で、共犯者と言えないか?そ

して彼の商才に依存していたからこそ、彼女の絵が大ヒットしたのだ。

ウォルターは、大衆の動向を素早くキャッチし、消費者の求めるものに感動的ストーリ

ーを付加して届ける。ビジネスマンとしてはかなりのやり手だ。なのに大成功を収めた

途端、妄想と狂気の闇に支配されてしまった。こんな人、業界に少なからずいそうな気

がするのは私だけだろうか…。

映画全体に大きな目の人物の絵が散りばめられ、観る者の心を射抜くような視線が飛ん

でくる。こんなに映画を観ながら同時に映画に観られている感覚を持ったことはない。

とても新鮮な感覚だった。


本作には、ティム・バートン作品の常連、ジョニー・デップやヘレナ・ボナム・カータ

ーが出ていない。それでも確かにティム・バートン作品だと感じさせるのは、大きな目

と美術セットや照明で作り出された世界感のためかもしれない。


『ビッグ・アイズ』
監督 : ティム・バートン
脚本 : スコット・アレキサンダー、ラリー・カラゼウスキ
出演 : エイミー・アダムス、クリストフ・ヴァルツ
2014年/アメリカ/106分/カラー





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