となりの囲いが…
「となりの空き地に囲いができた」「へー」と言うのは、落語の前座がよくつかった小
噺の初歩なのだが、最近「となりの囲いが空き地になった」。
ここは雑木林があったところで、囲いこそあったが地主の好意で出入りは自由になって
いた。自然保護団体がながいこと行政に買い上げを要請していたが、お定まりの予算が
ないという理由で買い上げのそぶりさえみせなかった場所だ。予算がないことも事実だ
がほかに理由がある。この雑木林の隣接地が防災公園になっている。災害時の救援拠点
になるばかりかヘリコプターが降りられるようになっている。残念なことに発着のジャ
マになるので大きな木は切ってしまった。外周地にある雑木林をふくめて整備をすれば
広い芝地とともに憩いの森をもつすばらしい公園になったはずなのに、行政は防災のみ
という単一予算でものを動かしているからそれをしない。
もっと大きな理由は市民運動がもりあがらなかったことにある。どうも日本人というも
のは運動が出来ない公園はすきではないようだ。自然を生かした公園は、使用料収入が
少なく維持費がかかる。行政が無理をしてでも買い上げないわけだ。ヨーロッパに行っ
て、東京23区くらいの都市に日比谷公園の倍以上の広さをもつ緑豊かな公園がいくつ
もあるのを見るとうらやましくなるがこれは個人の好みなのだろう。
この土地に20戸ほどの住宅が建つ。不動産屋は「緑豊かな公園隣接地、庭付き一戸建
て」といって売り出すのだろうが、庭といってもプランターに毛が生えたていど。十分
に整備された公園より、わが庭をほしがるのが日本人の特性なのだから、とやかくいわ
ずに「となりの囲いが宅地になった」「へー」と答えていれば世の中角がたたない。 |