思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせいが危機状況の冷静な見方と対処の仕方について。





てきをしりおのれをしれば


世の中おもしろくなってきた。

南沙諸島で中国が主権を主張する12カイリ圏内をアメリカの軍艦が航行した。

アメリカは公海といい、中国は領海という。

すわ、一触即発といさみたった筋もあるようだがそんなことはない。

ケンカというものは相手の出方がわかるとおおきくならない。ケンカをするとき、

相手がまちがいなく弱いとわかっていれば強い方は相手を半殺しにするかもしれな

いが殺すことはない。ところがおたがいの強さがわからない者がケンカをすると、

相手の強さを憶測しそのうちに相手の過大評価とその幻影にさいなまれ必要以上の

力をだしてしまい悲惨な結果をよぶ。アメリカのイラク攻撃がいい例である。


争いごとに憶測と幻影は禁物である。

1日のNHKスペシャル「盗まれた最高機密」を観たひとはわかるだろうが、核兵

器の拡散はアメリカの憶測と幻影に端を発する。

ナチスドイツと日本の核兵器開発の情報をえたアメリカは大急ぎで核開発をはじめ

る。とくにヒトラーが原爆をもったらたいへんなことになると、国中の科学者技術

者を総動員して巨額の費用をつぎこんで開発に成功しかけた。そのときドイツは電

撃作戦のため通常兵器の製造を優先して時間のかかる核兵器開発は中止にしたとい

う情報を得た。ここでアメリカは原爆製造を中止しておけばよかったのだが科学技

術というものは動き出したらとまらない。またアメリカ政府もヒトラーが原爆を使

うという幻影はぬぐえたが、こんどは欲が出て広島、長崎の原爆投下となりその後

はごぞんじのとおりとあいなった。


話しを南沙諸島にもどそう。

アメリカは戦争をしたくないし、中国はアメリカと戦えば負けるとわかっている。

しかし、おたがいの面子はゆずれない。そうするとのこされた手段は争いにならな

いていどの示威行動と口戦しかない。

つまり外交である。中国もアメリカの出方がわからずビクビクしていたところに答

えがでたのでホットしていることだろう。アメリカも自衛隊に「おまえ代わりにい

やがらせしてこい」なんて言わないから米中の外交戦略の問題である。日本はアメ

リカの応援団になるのはよいが、戦争大好きの首相がアジアの安全保障とかいって

口をだしてはいけない。

外交戦は鉄砲の弾はとんでこない。ここは高みの見物をするにかぎる。

孫氏の兵法をもじっていえば「敵を知り己を知れば戦いおおきくならず」である。


蛇足:日本の原爆は、科学技術のセンスに欠ける軍部のおかげで、敗戦まぢかの実

験室レベルのものであった。これだけはアンポンタンの軍部に感謝しなければなら

ない。


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