7/16のしゅちょう             文は田島薫

金なし老後術について

どんどん老人ばっかり増えてる日本。これは、不景気といいつつ、飢え死にしたり病死す

る者が減って来てることもあるだろうから、それほど悲惨な世の中でもない、ってことも

言えるんかもしれないんだけど、老人一人当りの生活費は月に最低20万は必要だ、なんて

マスコミじゃ普通の会話したりしてる一方、無収入か国民年金の数万円だけがたよりの上

に病気、っていった老夫婦や孤独老人もありうるのが、わが格差社会だ。

金がないのに病気でうんともすんとも体が動かない、ってことになれば、だれかか公にな

んとか援助してもらって治療するしかないのはしょうがない、として、まず、体さえ動く

んであれば、多少体調不良でも体を動かし続けるのが、まず、一番いいことなのだ。

年をとれば、だれだって体のどっかしらには支障をきたすわけで、そうなれば、動くのが

しんどいから、すぐに休みたい、横になりたい、って感じるはずだけど、そこをなんとか

踏ん張れたら、道は開けるのだ。

長生きで元気な老人、ってもんは、金のあるなしにかかわらず、まず、体を動かし続けて

る、って共通点があるのだ。ちょっと体具合悪いから病院行ってめんどう看てもらおう、

ってすぐに考える者は、元気で長生き、ってわけに行きにくくて、たいていは、徐々に弱

ってって、やがて寝たきりになり、長生きでも、生きてるような生きてないような、って

形のことになりがちなのだ。

自分の体の状態を知って、それにいい食生活なり運動をして行くのが療養の基本であって、

とりあえず病院へ行ったり、とりあえず医者のいいなりに手術受けたり大量の薬もらった

り、ってのはだめなんじゃないか、と私は思うのだ。

もう10年ほど前になると思うんだけど、朝仕事へ向かう駅までの道で向こうから歩いて来

るミイラのような女性に遇った。顔も体も骨と皮だけで、年令不明の苦痛そうな表情で、

すぐにでも息絶えて倒れてしまいそうな風体なのに、歩きは意外にしっかりしてた。

それから、朝に駅から、夜帰宅する時には逆に駅の方へ向かう彼女に時たま遇ったんだけ

ど、多分彼女は重病で、余命はいくばくもないんだろうなあ、って決めつけてたところ、

それから今日に至るまで、その骨と皮の今にも死にそうに見える彼女がしっかり歩く姿を

ずっと見かけているのだ。

人間、動いてればなんとかなるもんだ、って彼女の全身が語ってるのだ。




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