思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせいが、水仙の美の深さを教えてくれてます。



水 仙



子供のころから水仙が好きだ。花もともかくその香りがいい。

中学生のとき、園芸好きの教師から水仙の根分けを教わり庭に数十の花を咲かせていた。

庭のない生活になってから鉢植えもやってみたが水仙は地面に咲かないと趣がない。雪中

花ともよばれるくらいだから雪のなかに咲く姿は風情があるが庭がなくては楽しめない。

切り花は別だ。一輪、床に活けてあるものは禅味がある。茶花につかわれる道理である。


水仙は、中国から渡ってきた。

いまでは多くの改良種があるが、なんといっても日本水仙とよばれるものがよい。

近くの公園に水仙の小さな群落がある。出来て5〜6年の公園なのでようやく昨年あたり

から群落とよべるようになってきた。カメラ片手に小一時間も香りにひたるのは至福のひ

とときだ。


英名はnarcissus。ナルシストの語原ギリシャ神話に由来がある。花言葉もそれにならって、

うぬぼれまたは自己愛。

水仙の字は、中国の古典「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」

の水仙からきたという。水の仙人「水仙」としたのはギリシャ神話と符合しておもしろい。

くわしくは忘れたが、ギリシャ神話はけっこう東洋の古典にはいっている。


厳冬のさなか、庭に咲く一輪の水仙をみて、その凛とした姿を好もしいという人がいた。

芭蕉の句に「水仙や 白き障子に とも映り」というのがある。

真白な水仙の花と白い障子をかけたのだろうが、そこに人の姿をとも映りさせると新しい

神話ができそうだ。


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