9/26の日記          文は田島薫

親父の老衰

親父の肺炎の方はほとんど治まったのに、肝心の食べ物を飲み込む力がなく、食事

は点滴とチューブに頼りながら、口のリハビリをしてもらってるんだけど、全身の

体力が弱ってきてる上、なにせいつでもすぐに目をつぶってしまうくせが治らず、

そのうちに居眠りをしてしまうので、リハビリが進まないのだ。

どんな問いかけにも黙ってることの方が多く、極たまになんとか気分表示の一言を

やっと言うぐらいで、先週の土曜の担当医師の話によると、これはもう老衰だから

弱る一方で、リハビリしても回復は多分無理だろう、と言う。

これは親父にきっちりリハビリの自覚を持ってもらわなくちゃいかん、と思い、目

をあけてないと余計弱ってるように見られちゃうし、目をあけてきっちりリハビリ

がんばんないと死んじゃうよ、寝てる場合じゃないよ、寝るのは夜だけにして、昼

間は寝ないで手足や口の舌を伸ばしたりの運動を自分でやる方がいい、死ぬか生き

るかだ、とにかくだれか来た時には目をあけた方がいい、って私が耳元で話すのを

目をあけてじっと聞いていたからわかってもらえたはず、って帰った。

そして、バスが休みの日曜の次の今朝、また病院へ行くと、ベッドに起き上がって

目をしっかりあけた親父がいた。お、こりゃ親父がんばってるね、って言っておふ

くろと喜んでたら、そこへ足のリハビリの先生が来て、おはようございます、って、

親父に声をかけた。数日前には声をかければ、一応、おはよう、って答えてたのが、

目だけあけてて応答しない。私がそば行って、先生がおはようございます、って言

ってますが、って言っても、きょとんとしてる。先生が、じゃ腕を動かしますね、

って言っても答えず、そのうち目をつぶった。目をあけて、って何度か言ううちあ

けたと思うと、すぐにまたつぶってしまう。一度身体をゆすったら、目をはっきり

あけたんで、おお、これならいいかも、ってみんなが喜んで間もなく、また目をつ

ぶり、その後は、何度言っても金輪際目はひらかず、目をつぶったままで言われる

まま動かされるまま、条件反射かまたは、しぶしぶのように自分でもやっと身体を

動かしながら車椅子に移る練習、血圧を計るとやっぱり少し下がってるようだ。

体力衰弱と脳硬塞と認知症と頑固が一緒、これだと、親父、も〜だめか〜?




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