8/8のしゅちょう             文は田島薫

(無名の強さについて)

シンガーソングライターの山下達郎さんが、新聞のコラムで、自分は無名で一心に物

を作る人になりたい、ってようなことを言ってて、共感したわけだけど、私は山下さ

んと違って、有名になろうとしてもなれないわけだし、事情が違うんだけども、一応、

共感した、って言わせていただいて、受け売りを。


歌を作ったり歌ったりし始めた若い時、自分は金儲けや有名になることは望んでなく、

ひたすら自分にとっての音楽を追究することが生き甲斐だった、って。

売り出しのバンドが、気に沿わない表現を強要される時の常套語句、最初だけ妥協し

てくれ、売れた後は、自分たちの好きなように表現できるから、ってのは嘘だ、って、

最初から自分たちの信じる表現を追究するのでなければ、長続きはしない、って。


一度テレビに出た後、どっかで、あなたテレビに出てた人でしょう、って、言われ、

何をしてる人かも無関係に有名になれそうだったのが、いやだった、って。で、マス

コミに顔を出すのを極力やめた、って。


また、ある時は、夫婦でのCM出演の依頼があり2日拘束で信じがたい高額のギャラを

提示されたけど断った、って。それを受けると、歌を書けなくなるだろうから、って。

歌を書くのは非常に苦しい作業でそんな時に、またCMに出たいな〜、って考えてし

まうかもしれないから、って、歌づくりで食べて行く、って覚悟がいいはずだ、って。


で、自分はアーチスト、って呼称は好きじゃない、って、自分は人より上に立つもの

だって意識を感じるから、だって。

自分は、無名でただひたすらいい仕事を仕上げたい、って働く人々を尊敬しているし、

自分もそういう人々と同じだ、って考えてる、って。




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