7/25の日記          文は田島薫

原田芳雄とアナログテレビの終わり

先週は、なでしこジャパン優勝でよかったよかった、って言ってる夕に原田芳雄さんの訃

報が尾形プロデューサーからメールで届いた時のショック。

私も含めたわれわれの世代では最も人気と敬意を集めてた俳優である原田芳雄さん、昔原

田さんの映画を撮ったことがあり、なおかつ原田さんと縁の深い黒木和雄監督とも旧知で

ある尾形プロデューサーに以前便乗し、原田さん宅の年末もちつき大会に3度ぐらいおじ

ゃまして、原田さんにも気軽に話しかけちゃったのに、(尾形さんが私を自分の友人とし

て紹介してくれてたものの)自宅に溢れるぐらい詰めかけてる関係者の中で、だれなんだ

っけこいつは?っていう相手である私にきちんと受け答えをしてくれてたのを思い出す。

家の内外で、スクリーンやテレビで見知った顔やいかにも業界人らしいのが沢山集まって

座ったり立ったままでみんながじゃんじゃんビールやら酒を飲んで歓談してる中、原田さ

んはほとんど飲まずに、ずっと庭に置かれたうすの前に仁王立ちして入れ代わり来る仲間

の芸能人が杵を打つのを仕切っていて、いつまでも大勢の客は家の中で飲んでるものの、

新しく来る客はほとんど途絶え、庭で飲んでる客もぱらぱらな中、まだ遅れて来るかもし

れない仲間や後輩のためにひとりで立ってるのだった。しかし、来てる客はだれもかれも

幸せそうで、そういう人々を見るのがこの人は好きなんだな〜、って感じたもんだった。

縁側に寄ってった酔った私は、無礼にも原田さんの肩をたたき、や〜、ここは世界平和の

基地ですね〜、って言ってしまったら、世界平和の基地か〜、って笑ってくれたのだった。

受け入れてもらったつもり友人にでもなったつもりの私は、それから、夫人に、お帰り下

さい!、って言われるまでねばり、原田さんや桑名正博さんや近所の酒屋さん(?)のそ

ばでくつろいでしまったのだった(得体の知れない酔っ払いの私)。

ま、というわけで、原田さんはだれにでも愛されるはずの、わけへだてなく人を受け入れ

る度量の大きい人なのだ(部外者が無理に押しかけただけだろって?)。


そんな原田さんはビデオの操作もできないぐらい(?)のアナログ人間らしいんだけど、

きっとパソコンなんかやったこともないはず。パソコンで仕事やってる私は、同じ業界で

のコンピュータグラフィックなどの進歩とその興味には異和感を感じてるとこなんだけど、

少々の焦りもあったりする時、原田さんの存在は「そんなもんいらん」、ってことで成立

してるわけだから力づけられるのだった。

そんなこと思ってた昨日の正午、アナログテレビが終わった。うちは受像機はデジタルに

したものの、アンテナはアナログのままで見てたんだけど、秒読みの時、どーなっかな?

って心配してたら、セーフ!だった。

デジタル移行記念に、あまり観たくもなかった映画「トランスフォーマー」を観て、CG

技術の緻密さと根気にひたすら感心したのだった。




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