12/26のねこさん        文は田島薫

黒とらおあいそなし 5


12月の下旬にしては暖かく晴れた先週末の午後、家人と自転車で食料買い出しに出かけた

途中のねこよこちょう入口角の家。庭をのぞくと、テラス手前の縁台の上に黒とらがやっ

ぱり向こう向きに背を丸くしていた。少し笑いながら通り過ぎかけた瞬間、テラスの下に

めずらしく黄とらがいるのにふたりで気がつき、止まってそっちをながめた。黄とらの方

もわれわれの方を向いたんで、ふたりで手を上げてあいさつしてやったら、ちょっと体が

固まってからすぐに顔をちがう方へ戻し、知らんぷり風に伸びをした。


きょうもぼくはこ〜やってこっち向いて日なたぼっこしてんだよね、ん〜ん、お日さまが

ぽかぽか背中暖っためてくれて気持い〜ね〜、だれにも気がねいらないんだよね、こっち

向いてっからね、こないだは思わず道路の方向いてあぶない目にあったかんね、きょうは

てこでもこっち向きなんだよね。お、後ろで不吉な自転車が止まる音が、あいつらだな、

ほらほら、あにきが見っかっちゃった、ま、でも、あにきはぼくとちがってはなからおあ

いそなしだから大丈夫だな、お、あにき、目そらして、伸びしたね〜、うまいっ。


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