11/21のねこさん 文は田島薫
黒とらがおあいそ 3
午前中の小雨が上がり、まだ少し霧雨が残ってる午後、私ひとり自転車で食料の買い出し
に行く途中のねこよこちょう入口角の家。庭にはねこさんたちいなかったんで、通りすぎ
てから、裏の駐車スペースになんか黒っぽいかたまりが目の残像にあったんで、もしやっ
て引っ返してみると、駐車スペースのまん中に黒とらがいてこっち見てる。お〜、つって
自転車のスタンド立ててると、ねこさんこっちへ寄って来た。首まわりや背中を軽くもん
でやって手を休めると、ねこさん5〜6歩向こうへ離れて立ち止まりそっぽ向いてる。こ
っちもほっとくと、またこっちへ寄って来るんで、また同じようにもんでやると、また向
こうへ行きそっぽ向いて、また寄って来て、もんで向こう行き、って3度めはもうこっち
へ寄って来ないんで、じゃ、行こうか、って奥見ると、水道の蛇口があったんで、ちょっ
と手洗うかな、ってそっち歩いて行くとねこさんなんとなくついて来る。蛇口ひねると水
が出ないもんで、なんだ、ってひっかえすとねこさん中途半端な感じで佇んでいる。
どっかで昼寝すっかと思って来たんだけど、なんだか空気がしめっぽくていけないやね、
どーすっかな、がまんしてあっちの台の上か下で寝るかな、いややっぱりあっちはちょっ
とさみーから、こっちの奥のあの石の上のがいーかな、いやいや、こっちのちょっとうす
ら陽があたってるよーな全然あたってないよーなここにすっかな、いや〜、どっちもいま
いちだね〜、じゃ、帰っかな、お、今通り過ぎたのがなんだか戻って来ちゃったよ、おっ
と、あの2人組のひとりだ、やばい、目が合っちゃった、これだと、気づかなかった、っ
てふりは無理だな、いやいやまいった、もーこーなったら、いやー、こんちわー、つって
ちょっと相手してやって早く帰ってもらうか、いやーこんちわ、あ、そこもんでくれんの、
こっちも?も〜おわりましたか、じゃ、ぼくはここでしつれー、あれ?まだ帰んない?も
ー1回?はいはい、じゃ、これで、あれ?まだ、はいはい、じゃ、これでぼくはしつれー、
んん、ん、まだか〜、お、立ち上がった、よかったー、つってると、あれ?こっちへ歩い
て来ちゃう、ってぼくも思わずついてっちゃったい、いかんいかん。