10/11のねこさん        文は田島薫

黒とら船をこぐ


出かけた帰りのちょっと肌寒いぐらいのきのうの夕方、駅から歩いて来て、ねこよこちょ

う入口角の家の庭をのぞくと、テラス手前の縁台のさらに手前のコンクリの上に黒とらが

両足をふせて背を丸くした体と横顔が見えた。どうも、うとうとと眠ってるようで、私が、

ちょっちょっ、って舌で合図しても気づかないんで、だまってじっとながめてると、鼻先

がコンクリすれすれまで下がって来ては、かくんとまたちょっと上に戻る、ってことをく

り返してる模様。


なんだかきょうはずいぶんさみ〜ね〜、あの台の上にいるとちょっとさみ〜んでさ、いつ

もはあっちくていらんなかったここはど〜かな、って、座ってみたんだけど、ん〜ん、あ

んまし、あったかい気がしないね〜、ま、も〜ちょっとすっと、あったかくなんのかもし

んないから、ちょっと待ってみっかな、お、風が来たね〜、なんだか自然にぼくの毛が立

っちゃって少しあったかくなったよ〜なそ〜でもないよ〜な、静かだね〜、お、また、風

さんが、ちょっと草さんのかおりがすんね〜、これも〜ありかな〜、な〜、かくん。


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