1/6のねこさん        文は田島薫

場所とり


松の内の3日家人と駅の方へ散歩がてら買い物に出かけた途中の住宅地の畑。陽のあたる

まん中にとらねこさんが背中を丸めて寝そべってたんだけど、先日同じような場所で見か

けたねこさんより少しスリムで、別なねこさんらしい。するとわれわれがながめてる手前

から、少し太めのおなじようなとらねこさんが畑のはじっこを、ウネに植わってる葉っぱ

に身を隠すように、どういうわけか、抜き足差し足でゆっくりと、陽なたのねこさんの方

に近づいて行く。で、うねの切れ目まで来て、顔がちょっと出そうな5〜6メートルの間合

いのところで止まっている。陽なたねこさんの方は隠れねこさんに気づいてるような気づ

いてないような、隠れねこさんの方は気づかれてないと思ってるような思ってないような、

われわれはしばらくながめてから歩き去りながらまたながめても、ねこさんたちの位置は

そのまま変わらなかった。


あのぼくの見っけた気持ちい〜ひなたぼっこの場所で、だれか先にひなたぼっこしてるぞ、

こら〜、っつって追っ払ってやんなくちゃいけないな〜、でもあんまり遠くからだと、気

がつかれなくて、ぼくだけひとりで騒いでる、って感じだとかっこわり〜からな、そ〜っ

とそばまで近づいてって、耳元で、おもいっきり、こら〜、つってやろ〜、ってことで、

ぼくは、こ〜やって、ゆっくり見っからないよ〜に、進んで行くんだね〜、そ〜ろ、そ〜

ろ、だいじょぶ、ぼくは葉っぱでぜんぜ〜ん向こうから見えない、ま、こっちから向こう

も見えないんだけどね、とにかく、そ〜っと、進んでって、そばまで行って、耳元で、こ

ら〜、って、あリ?耳元行く前に、急に開けちゃったね〜、まずいな〜、これじゃ、耳元

行く前に見っかちゃうな〜、しょ〜がない、こっから、こら〜、て言うか〜、や、まてよ、

こんな離れたとこから言うと、弱虫だと思われちゃうかもな、でも、な、そばまで行く間、

ど〜すりゃいいかな、だまって歩いてくと、なんだろな?って不思議に思われちゃうかも、

それじゃ、こら〜、って言いながら歩いて行くか〜?でも、向こうが、なんだこのやろ〜、

つって、急に飛びかかって来られたらやばいしな、ど〜すっかな、ん〜。


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