5/19のねこさん       文は田島薫

見張りねこさん


きのうの夕方、切れた牛乳を買いに行こうとしてた家人の腰

が急に痛くなった、ってことで私が代わりに坂上のスーパー

へ出かけた帰りの路地のどっかの家の塀が向こう折れた途中

に黄色のトラねこさんが座ってこっちを見てた。おう、って

あいさつして、見てると、ねこさんの方もこっちをじっと見

てるんで、こっちもじっと見てると、あっちもじっと見てる

んで、切りがないんで、じゃ、つって立ち去った。


ぼくはこーやって、このへんをあやしーやつが通らないか、

って見張ってんだよね。ほらっ、言ってるそばから、あやし

ーのが通ったぞ、って思ってっと、こちを見てやがる。なん

だなんだ、こんにゃろ、あやしーやつめ、なんだってんだ、

なにかよくないことをたくらんでんだろ、こらっ、それとも

なにかうんまいもんを、どーしてもぼくに食わせたい、って

言うのか? そんなあまい言葉にのるぼくじゃないんだぞ、

へんなからだにわるいもんを食わせよー、ったってそーはい

かないぞ、こんにゃろ、ん? あれ? 行っちゃったか。



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