●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、あの小さな花と心が通じ合ったようです。
ドクダミの白い十字架
私は白い花が好きだ。
初夏はなぜか白い花が多いような気がする。
泰山木、ヤマボウシ、ハンカチノキ、くちなしの花などに散歩で出会うと、思わ
ず足を止めて見とれてしまう。
そして庭の片隅や空き地では、今花盛りのドクダミの白が美しい。
繁殖力が強く、いやな臭い、そして名前などどちらかと言えば、雑草として嫌わ
れ者のドクダミだが、よく見ると、空に向かってぱっちり開いた白い十字の花は
なんと可憐なことだろう。密集していると白い星が輝いているようだ。
なんとなく不自由な今どき、コロナを心配する心や友に会えない寂しさを慰めて
くれるようである。
今年初めて友人からドクダミの花に八重咲があるのを聞いた。へ〜見てみたい、
と思ったら、なんと近所の家の門前にあったではないか。それも珍しいからか鉢
植えにされて。しげしげと眺めたが、ただくしゃくしゃとしてるばかりで、やは
り一重の方が断然いいと思った。
ドクダミ茶とか漢方薬とか体に役立つばかりでなく、あのパッチリ開いた白十字
の花には不思議な心の共感力があるような気がする。
道端から通る人を見上げながら、「大丈夫」「わかる、わかる」「私がちゃんと
見てるから」なんて元気づけてくれそうだ。
気がつくと、今年、私はすっかり”ドクダミスト”になっていた。
(一葉もどきは家の建て替え準備のためしばらくお休みいたします)
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