映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、独自路線映画の見事な表現に感心したようです。
『二宮金次郎』封切り
前回書いた『二宮金次郎』が初日を迎え、写真美術館での上映+舞台挨拶に行ってきた。
会場はほぼ満席。上映の一時間前に行ったにもかかわらず、その時点で良い席は全部埋
まっていた。監督には失礼ながら、こんなに入るとは驚いた。
まずは合田雅吏演じる金次郎。元は貧乏百姓だけど、学問を身に着け道徳を重んじる人
物とあって、品性を感じさせるキャラクターであってほしいなぁと願っていた。すると
流石は榎孝明さんご推薦の合田さん、まるで品性が服を着て歩いているようだった(因み
に合田さんは早大卒)。勿論他の百姓たちの演出・演技も、金次郎との差が出るよう工夫
がされてはいたけど。上映後に登壇された合田さんは、背が高くスラっとした30代の
若者といった印象。しかしスクリーンの金次郎は実際の合田さんよりがっしりしていて、
年齢的にももっと上に見えた。さすが役者、化けたんだなぁと思ったら、なんとなんと
ご本人の実年齢はほぼ50とな! (by ウィキペディア )ステージ上の合田さんの方が化けて
いたのか?いずれにしても驚いた。流石だわ。
田中美里演じる妻役には重要な場面が2つ用意されており、一つは物語の流れをガラリ
と変え、もう一つは夫婦の愛が一言のセリフもなく動きだけで表現されているシーン。
本作中最も感動したシーンだった。舞台挨拶で分かったことだが、普段滅多にアドリブ
を入れない田中さんが、ふと思い立って入れた動きらしい。やはり表現者なんだなぁ。
脇でとりわけ素晴らしかったのは、柳沢慎吾演じる小作人だった。私は配役を知った上
で見ていたけど、あれを柳沢さんだと暫くわからなかった人、いるに違いない。屈折し
た百姓の表情、動きの素晴らしいこと!
今回一番チェックしたかった時代劇のセット、衣装、かつらは、かなりリアリズムを追
求しており、とても勉強になった。セットは作らずロケハンで見つけたとのこと。見事
な茅葺屋根だ。「リアルをいかにフィクションとして取り込んでいくかが大切だった」
と、自信を持って五十嵐監督が仰っていた。
『二宮金次郎』
監督:五十嵐匠
脚本 : 柏田道夫
出演 : 合田雅吏/田中美里/榎木孝明/柳沢慎吾