●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
人の顔を凝視観察描写して、やはりと再確認した真理。
人物画
私は人物を描くのが好きである。
今回の展覧会でも人物画を出した。
人物画はどうしても似せることに腐心しがちで、また見る方もそれを第一に評価する
ので難しい。
そのためデッサン力がなくてはならない。
それでもなるべくその人らしさを出すことに専念する。
似ている、似ていないなど気にして描いているうちにそんなことよりも、今この人は
何を考え、どんな立場に置かれているか、などを考えていく。
描いている間、ずっとその人の気持ちや置かれている立場などをあれこれ想像を巡ら
しながら、相手と対話している。
人物は知人だったりまったく見知らぬ人であったりするのだが、結局はそのモデルを
借りて自分の解釈や心の表現となる。
幸いなことに私は、ああでもない、こうでもないと描いているときは夢中になれる。
もしかすると、私は人間が好きなのかもしれない。描いているとなんとかその人物に
同化したいと思う。
そして気がついたことは人物の決め手は何といってもまなざし。
対象の顔がゆがんで描かれても、またパーツの口、鼻、バランスが崩れて描かれても、
目さえしっかり描けていれば、表情が決まる。
やさしい目、悲しい目、寂しい目、怒りの目、うっとりした目、訴える目などさまざ
ま。顔の中で最も情念の込められるのが目。
“目は口程に物を言う”という言葉があるように、現実の世界でも目は正直に人の心
の動きを表す。
人と向き合ったらまず目を見よう。何事もまずそこから始まる。