映画だ〜い好き        文は福原まゆみ


尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
心に残るジジィ映画。



リチャード・ファーンズワースの遺作


何年か振りにビデオで観た巨匠デヴィッド・リンチの映画『ストレイト・ストーリー』。

仲違いしたまま10年も会っていない兄が倒れ、生きているうちにもう一度会おうと、和

解の旅に出たおじいちゃんの話だ。 車の免許がなく、人に頼るのも嫌がる頑固なアルビ

ンおじいちゃん。 彼にとって、交通手段は時速8キロのトラクターしかない。 周囲の好

奇の目もよそに、兄の家まで何百キロもの旅に出た。 様々な出来事の中に、市井の人々

との触れ合いが描かれ、都会の雑踏の中で、ともすれば忘れがちな「こころ」を思い起

こさせる。 トラクターの故障を直してもらったり、民家の電話を借りたり、食べ物を分

けたり分けてもらったり。 シンプルなエピソードの繋がりだけれど、どのエピソードに

も暖かいドラマの波がある。 「アメリカの良心」と言ってしまうと月並みか・・・。 映

画というものは、時間空間を操る。 トラクターののろのろとした動きや、ゆったりと流

れていく田舎の風景に、まるで時間が伸長したような錯覚を覚えるが、年老いたライル

(兄)とアルビンにはもう時間がない。 映画の中でゆったり流れる時間とは裏腹に、観

る者は切ない焦燥感をあじわう。 切ない物語だけど、リチャード・ファーンズワースの

頑固っぷりがいい。

頑固ジジィにばんざい!


監督:デヴィッド・リンチ
撮影:レディ・フランシス
主演:リチャード・ファーンズワース
製作国:アメリカ/フランス
上映時間: 111分
公開: 2000年



6/18/よんさんからコメント
「ストレイトストーリー」は私も好きな映画のひとつです。
マイペースで協調性がないのかな?と思うと、暖かい人だったり…


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