4/2のねこさん 文は田島薫
ねこさん長いこと立ち止まる
きのうの午後、陽が傾いてくる頃、家人と最寄り駅へ向かう大通りの鋪道を歩いてる
と、反対の鋪道から黒っぽい小柄なねこさんがけっこう車が行き来してる大通りを横
切って歩いて来た。われわれは、お、あぶない、って見てるうちに無事渡りきって鋪
道のわきの建物とフェンスのすき間に入って行った。
家人が、ねこちゃんねこちゃん、って呼びかけながらそっちへ行き、2人ですき間を
のぞいてみると、向こうへ行きかけてたねこさん、こっちに向きを変えて2、3歩こっ
ちへ歩いてから、じっとこっちを見つめて固まっている。家人が、も〜あっちの道路
渡っちゃだめですよ、あぶないからね、わかった?って言ってるのをじっと聞いてる
模様。もう一度同じこと言って、わかった?ってねこさんに言ってから、わかったみ
たい、って私に家人が言うんで見てみると、ねこさん、向こうへゆっくり歩いて行く
ふりしてから、ちょっとそばの地面を掘るふりもしてる。
なんだかわかんないこの広場のあっち側へ、歩いてってみよ〜、しかし、なんだかお
ちつかないとこだね、なんだかでかいもんが通り過ぎて行くし、おし、っとこっち側
へ来たけど、さっきのより狭いけどここもおちつかないね〜、あっちのもっと狭いと
こへ入ってった方がおちつくかも、つってると、だれかがぼくを呼んでる声がすんね、
だれかな?か〜ちゃんかな?お、2人組のうちのなんだかやさしそ〜なおばさんが何
か言ってるね〜、なんだろ〜ね〜、ぼくに毎日ずっとごはんあげるからついておいで、
って言ってるのかな、それなら、ついて行ってやってもい〜かもしんないけど、ん〜
ん、そ〜ゆ〜ことでもなさそ〜だね、なにかうんまいもんを手に持ってるよ〜でもな
さそ〜だし、今だけ、ただぼくと話をしたかったのかな、だったら、も〜い〜ね、ぼ
くはも〜あっち行くね、止めるなら今のうちだけどね。