●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、人を見てはイマジネーションで遊ぶようです。


気になる人


近所に以前から気になる女性がいる。

我が家よりも奥に住んでいるので、駅に向かうときや商店街へ向かうときなど我が家

の前を通る。それで私が外に出たときや道路を掃除しているときなど、たまたま見か

けるのだ。

年齢は50代、いや60はいっているのかもしれない。髪は軽くパーマのかかったセミロ

ングで、服装もシャツブラウスなどきちんと感があり、薄化粧で、まるでどこか大手

の会社の秘書のような華やかさと知的な雰囲気を漂わせている。

主婦のような生活感がまったくない。

いつも一人。きっと独身で仕事を続けてきたキャリアウーマンなのだろう。

ことわざに“朱に染まれば赤くなる”というのがあるが、特に女性はある年齢になる

と、その人の生きてきたようにその人の雰囲気はつくられるものだ。

専業主婦ならばそのように…共働きならばそのように…さらにどんな人と交流してい

たか、何に興味を持っていたか、どんな時間の使い方をしていたか、化粧は…さらに

お金持ちか否か…なんてことが影響するのである。

私が気になるその人はどんな境遇であの独特の雰囲気をつくりあげたのだろう、と興

味をそそられる。

そして最近、会社勤めを辞めたらしく昼間でも会うことがあり、スニーカーを履いて

颯爽と歩いている。

ある日、駅で彼女を見かけた。

彼女はなんと駅の売店で新聞を買っていたのだ。

ふつう、新聞を買うのは男性ばかりで女性がホームの売店で新聞を買うのをほとんど

見ない。

女性は新聞というものは家で読むものだと考えているふしがある。出掛けで時間がな

かったら配達された新聞をバッグに入れて、電車で座れた時に限り読んだりする。

彼女が売店で新聞を買うのを目撃して半端でない社会とのかかわり方を感じた。

ますます気になる人となった。


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