●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの悲喜こもごも買い物シリーズの9。


シリーズ こんなもの買った

ヘアカラー


私は美容院へは滅多にいかない。

なぜか?

まず、時間がかかる、出来上がりが自分の好みの髪形にぴったり合ったためしがない、

施術中美容師との話題に気を遣う、あてがわれた女性週刊誌にすぐ飽きてしまう、店の

さりげなく客を品定めする視線がイヤ、etc・・・

つまり、気を遣い、時間を遣い、お金も使った挙句に出来上がりが「こんなはずじゃな

かった」という思いをするのは、アホラシ〜となるのだ。

大体私の髪の毛は固く太くパーマがかかりにくいので、パーマかけてもただボリューム

が多くなっただけで代わり映えがしないのである。

ちょうど私は東急ハンズで見つけた手軽で便利なヘアーカッターという秘密兵器を持っ

ている。それで長くなったぶんをちょいちょいと自分でカットすればよい。

髪型はこれで解決したとして、年齢的に白髪の問題がある。

最近、新聞の家庭欄に、白髪を染めるか、染めないか、の意見が載り、染めないグレー

ヘアーという自然派志向の意見が力を得ている。

白髪染めの負担から解放されたら、女は無敵の一人前?

最近の性差撤廃の機運を反映した興味ある論争だった。

その一方で、“見た目ファースト”という傾向もある。

気がつくと、最近のメークはどんどん濃くなっているではないか。

歯医者の受付嬢がつけまつげにアイラインくっきりでドキッとした経験もある。

パーマかストレートか、茶髪か黒髪か、白髪染めか自然派か、は序の口で、まつ毛パー

マやアイラインの入れ墨、そして仕上げは爪のデコレーションマニキュア、と女性の美

への変遷はとどまることを知らず、美容院の守備範囲は広くなるばかりなのだ。

まったくせつないのは女心。日々小さな煩悩のなかで生きていることがよくわかる。

そんな風潮を横目でやり過ごし、十年一日のごとく同じ髪型の保守派ながら、まだ悟り

の境地にたどりつけない私は最近増えてきた白髪を隠すべく白髪染めを買ったのだった。

つくづく思う。究極のヘアースタイルは瀬戸内寂聴氏かも。


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