●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの悲喜こもごも買い物シリーズの5。
シリーズ こんなもの買った
白の絵の具
ブルーな気分、真っ赤な嘘、黄色い声など、色はそのときの状態を表すのによく
使われる。
言葉を尽くさなくても色だけで、どんな状態かストレートに伝わるということは
すごいこと。
色の持つ底力である。
なかでも、“真っ赤な嘘”というのはなかなか意味深だ。
幼い頃から人は、ウソをついてはいけません、としつけられた。嘘は悪、ならば
邪悪なイメージの黒で“真っ黒な嘘”のはずなのに…
でも違う。
なぜ赤で、黒ではいけないのか。ここが面白いところ。
赤にしたのは嘘にも良い嘘、悪い嘘があるという、複雑な嘘の本質を言い表して
いるからだろう。
考えてみれば、人の一生の内、嘘をつかないで過ごせた人は何人いるだろうか。
相手に心配をかけぬための思いやりの嘘とか、生き延びるための知恵というべき
嘘、咄嗟の嘘、嘘は人の気持ちの揺れでもある。
悪い、暗い、闇のイメージの真っ黒な嘘ではなくて、明るく強烈なインパクトの
ある真っ赤がぴったりなのだ。
絵を描いたり文章を書いたりするとき、思いを強調するために嘘を入れる。
油絵では嘘をつくため、ああでもない、こうでもない、と描きなおすとき、白い
絵の具で白紙に戻しては改めて色をのせたりする。
そこで白がすぐなくなり頻繁に白絵の具を買うことに。
私の絵は“真っ白な嘘”をつくことから始まる。