思いつくまま、気の向くまま 文と写真は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、かわいい娘(こ)のしゃれたセリフで世界を肯定したようです。
「買ってもらいたくないみたい」
買い物のとき、バーコードがうまく読み取れないでイライラした経験はだれにもあるだろう。
順調にバーコードを読み込んでいた流れがとまった。レジは二十歳そこそこのおネーちゃん。
ふつうこのようなときは客を待たせてはいけないという考えか、レジのオバサンはこまった
ような顔をする。ところがこの娘は愛嬌のある顔に笑みをうかべながらなんどもバーコドを
読み取り機にさらす。それをひやかすようにニヤニヤしながら見ていたら、「買ってもらい
たくないみたい…」と笑顔でつぶやいたので、そくざに「タダかと思った」と言ってやった。
「買ってもらいたくない」とはふつう売る側の人間が言うことではない。これはこの娘の、
店と客という面倒な考えをさしはさまない素直な気持ちから出たものなのだろう。本来なら
気まずい場面だが、商品を擬人化することでこの場をなごませた。世の中には気転のきく娘
がいるものだ。