思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、過酷な旅から帰還のようです、エピソードその13。





モロッコへいってきた

バスの窓から「気分はパリダカ」





バスは、平坦な土漠のなかの一本道をサハラ砂漠の入り口エルフードにむかってひた走る。

今夜はこの旅の目玉のひとつ、サハラ砂漠の日の出を見るために砂漠のホテルに泊まるのだ。

そのためには途中エルフードの町で4WDに乗り換えねばならない。出発前にもらった旅行

の予定表にも、やや、もったいぶるように「砂漠を走るので、エルフードで4WDに乗り換

えていただきます」と書いてある。それを読んで、しめたパリダカの気分が味わえると期待

に胸がふくらんだ。パリダカとは、かつてあったパリからセネガルのダカールまで過酷な行

程を走るラリーのことだ。砂塵をまきあげてサハラ砂漠のなかを疾駆する4WDの姿を思い

描くだけでも心がおどる。


サハラ砂漠の入り口の町エルフードは、土レンガの家がつづくだけの有名なわりには小さな

町だ。ここでバスから指示通りの一泊分の荷物をもって4WDに乗り換える。

一台4人、5台のキャラバンは出発した。町をはなれてしばらくは舗装道路を走る。いつか

は砂漠になるのだろうと思っていると、いつまでも舗装道路が終わらない。そのまま20分

ほど走ると今夜泊まるホテルの前に来てしまった。舗装道路はそのまま土漠のなかを真っ直

ぐにつづいている。4WDはとうとう明日ラクダに乗るラクダステーションまで来てしまっ

た。こんなことなら、もったいぶってわざわざ手間をかけて一泊分の荷物なんか作らせずに、

そのままバスで来てくれればよいではないかと腹が立った。4WD乗り換えという仰々しい

儀式の照れ隠しのように、ラクダステーションの屋上であすラクダに乗って歩く砂丘を見な

がらミントティーをふるまわれるうちに立った腹も納まってきた。あわれパリダカの夢も、

一杯のミントティーにすり替えられてしまったということか。


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