思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、過酷な旅から帰還のようです、エピソードその6。





モロッコへいってきた

BINBOW PRICE





元気のでない断食中の風景


夕食のテーブルを囲んだメンバーの一人から、「わらっちゃった」とまえおきをし

て「BINBOW PRICE」が披露された。「ビンボープライス」一瞬なんのことかわか

らなかった。

話がすすむと、みやげ物屋をひやかしていたら店員が「ビンボープライス、ビンボ

ープライス」と言ってしつこく商品をおしつけてきたそうだ。最初はなんのことか

わからなかったが、「ビンボー」の意味を知っている世代である。すぐに「安いよ、

安いよ」のことだとわかった。貧乏という言葉を忘れて久しい生活をおくっている

ときに、急に貧乏という言葉を聞いてその言葉の使い方の巧みさに感心すると同時

に、こっけいになってしまいふきだしてしまったそうだ。

「それでどうしました?」と聞くと「もちろん買ったわよ。なんだか昔を思いだし

てね」と言った。


この「BINBOW PRICE」にはふたとおりの使い方があることがわかった。

ひとつはここに書いたように呼び込みで使う。もうひとつはというと、イスラム圏

で買い物をするときに、言い値で買ってはいけないと言われているように最初は2

倍どころか10倍くらいで値段をふっかけてくる。それをじっくりと値切っていく

のが商取引の原則なのだ。もちろん観光地のみやげ物屋でもかわらない。だんだん

値切っていくと「last price」と言って最終値段を示してくる。それでもダメだとい

うと大げさに嘆くふりをしながら「BINBOW PRICE」がでてくるというわけだ。

金を払い、物をうけとったあと、安く買えたのでうれしいはずなのだが、なぜか

「この貧乏人メ!」と言われたような気がして心やすらかではなかった。

写真のお兄さんたちは、昼間は断食中なので元気がないが、やがて日没となり食事

がおわると急に元気になって「BINBOW PRICE」をふりかざしてせまってくる。


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