思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、過酷な旅から帰還のようです、エピソードその19。





モロッコへいってきた

バスの窓から「カスバ街道」





おいしいヤギのミルクが効いたのか、Hさんの失敗を口にする人はだれもいないバスは

カスバ街道の起点の町キムルームを走っている。町といっても道路沿いに数軒の店が点

在するほかはせいぜい30戸位の民家がある小さなものだ。それでも、役所も小学校も

あるりっぱな町なのだ。

町をぬけると街道はトドラ河にそってつづく。道路の右側にある河にそってオアシスが

あり左側には荒野が広がる。オアシスのなかにはカスバがあり、そのさきにはまた荒野

がつづくというオアシスのありがたさがよくわかる景色だ。

カスバとは城塞のことを指し、その形は四角の建物の四隅に外敵を見張る塔があり、普

段は穀物などの倉庫になっている。外敵の侵入を防ぐために建物の中は複雑に部屋がつ

くられていて、なれないと簡単に外に出られないようになっている。このような建物が

あつまって村や町がつくられている。厳密には王や司令官がいるとカスバと呼び、村だ

けの場合はクサールという。町になったところで有名なのはアルジェリアにあるカスバ

とモロッコのフェズのカスバだが、アルジェリアのカスバは改築が進んで往時のおもか

げはない。と、わがゼネラルガイドのマイッタさんから仕入れた知識である。


しばらく走るとそのカスバが崩れて、昔、香港にあった九龍城のような不気味なものが

みえてきた。Hさんの話しだと洪水でこわれてしまったそうだ。もし洪水だとしたらと

んでもない水位になるのでおかしいと思い、マイッタさんに聞いてみると、「洪水では

なく大雨で建物がくずれた」それだけ言い終るとマイッタさんは空を指して「天の仕業」

だと言った。話を聞いて、泥レンガの建物をこわしてしまう大雨とはどんなものか見て

みたい気がした。

街道をはずれてトドラ渓谷に着いた。岩山がふたつに割れてその底に川が流れている景

色を見ていると、ここが砂漠の一角にあるとはとても思えない。川幅はせまいが水量は

豊富で土地の人も家族づれで遊びに来ている。水のないところに住む人々にとっては貴

重な場所なのだろう。

道をすこしもどったところにあるレストランで昼食。オアシスを見おろす崖にあるレス

トランで食べるベルベル料理は口に合わなかった。昼食をすませオアシス沿いにあるバ

ラの産地エル・ケアラムグナ村に向かう。砂漠のまん中でバラの栽培?と思ったが、こ

の村からは年間トン単位のバラの花がヨーロッパに輸出され、香料の原料になっている

そうだ。化粧水や石鹸を売るバラショップではバラの香りが充満していた。

小雨が降りだしたなか、バスはワルザザードの市内に入った。有名なタウリルトのカス

バの写真を撮るためにバスが止まった。ここは20世紀の初めまでマラケシュの司令官

ベルベル人のクラウイの住いだったところだ。中は複雑な造りになっていて女性専用の

祈祷室や豪華に飾られた部屋もあるということで、映画「シェルタリング・スカイ」の

舞台になったことでも有名だ。

カスバの近くにあるホテル、ベルベル・パラスに着いた。ここは1階だけとか、2階に

も部屋があるという、カスバを平らにしたように複雑な建物がきれいな庭の中にあると

いうすばらしいホテルだ。ラッキーなことに一階だけの部屋は広く貧乏性には落ち着か

ない。ポーターがリアカーで荷物を運んでくるのだが、広くて時間がかかる。待ちきれ

ないので必要なものだけ取りに行くという貧乏性まるだしでお里が知れた。シャワーを

あび、ゆっくりしているとタバコがほしくなった。フロントで聞くと売店にあるが20

時にならないと開かないといわれた。このホテルは町はずれにあるので近くの店という

とホテルの前に4,5軒ある店しかない。あとで行くつもりで先に夕食を済ませること

にした。さて、外の店に行こうとしたらいささか飲み過ぎてしまいホテルの売店で買う

ことにした。

さすがにホテル。いままで買った安いタバコは置いてなくて倍額の高級タバコを買うは

めになった。部屋にもどり、荷物の整理をしたあとテラスで一服して、今朝早起きだっ

たので早々と寝ることにした。



10/30/さぬがさんよりコメント
シャンさん、今回も楽しく読ませていただきました。
そ、ふと気がついたらね、自分なりにいつも挿絵を
想像してるんですよ。具体的なときもあれば、いたって
簡単な壁のときもあったり、見知らぬ土地の面白さを
漫遊。ついでですいません(笑)


戻る