思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、過酷な旅から帰還のようです、エピソードその17。





モロッコへいってきた

バスの窓から「砂漠からアンモナイトへ」





ラクダセンターに着いた。ラクダから降りるとラクダ曳きのお兄さんに一人20ドルのチップ

をわたした。これとは別に40ドル前払いをしてあるのだが、これはラクダ屋の親分のところ

にいったのだろう。お兄さんは、砂丘で記念写真を写してくれた。ビニールシートを引っぱっ

て砂丘を滑り降りた。これらのサービスを考えれば文句をいうほどではない。いまどき日本で

2千円はどれほどの価値があるだろうか。もっともこのチップは事前に決められていたことな

のでほんとうのチップと言えるかどうか…


トイレに行った人の帰りを待って、わが4WDはお茶一杯出ないセンターを後にした。

走り出した車は、急に舗装道路をはずれて砂漠のすみっこを走り出した。とんだり、はねたり、

スラロームをくりかえして砂漠の走行を体験させてくれた。これはサハラ砂漠に行ったけど舗

装道路ばかりだったといわれては沽券にかかわると思ったのか、「4WDで砂漠を走ります」

と仰々しく宣伝した旅行社の策略なのかはわからないが、いい経験をした。

ホテルの前で車を降りた後、朝食の時間まで自由行動だ。いちど部屋に戻って荷物の整理をし

たあと、ホテルの屋上にあがって雄大な砂丘をしっかりと目にやきつけた。

朝食をすませると、ふたたび4WDでエルフィードのバス乗り換え広場に。宿泊用の荷物をト

ランクに放りこむとバスは5分ほど走って、大きな石ころだらけの建物の前にとまった。アン

モナイト化石の加工工場だ。

サハラ砂漠は世界有数のアンモナイト化石の採掘地である。昔このあたりが海であった証拠で

もある。

工場内では、大きな石を電動丸鋸で厚さ5〜10センチ位に切り分けている。こうして出てき

たアンモナイトの化石を立体的に掘り出すか、研磨して断面模様を浮き出させている。これら

のものはテーブルや壁面の装飾用に加工され、小さなものはトレイや置物になる。もちろん工

場内には即売場があり、ここではアンモナイトのほかに海藻や三葉虫の化石を磨いたものを売

っている。


メンバーのなかに、80歳を越えた2人の老婦人がいる。ひとりは、見るからに良家の奥様と

わかるおっとりとした品のある老女だった。もうひとりはガラッパチでなにごとも行動の早い

人だ。ふたりは女学校いらいの友人だそうだ。そのおっとり夫人が大きな海藻の化石を買うこ

とにしたら、ガラッパチさんが「あんた、そんなものを買ってどうするのよ」と声を荒げると

「わたし好きなの、こういうの」といって値段を聞いている。それをみて「そんな重たいもの

どうやって持って帰るの」とガラッパチさんはたたみかけた。おっとり夫人は、「いいじゃな

いの、わたしが買ってわたしが持って帰るんだから」とおだやかに、かつキッパリと言って値

段の交渉にはいった。この老々漫才にまわりはおもしろがって、しばし自分の買い物をわすれ

るほどだった。あとで聞くと最終値段は1万円を越えていた。

模様の美しいものは1〜5万円くらいする。こちらが手を出せるのは径が5〜7センチくらい

の小さなアンモナイトを真二つに割って磨いたものくらいだ。それでも言い値は2倍くらいに

ふっかけてくる。半値までにするのには10分以上の根気と時間を要する。みやげ用に買った

ものは2000円と値段が安かったので7掛けで手を打ったが、自分用に買ったのは模様がよ

かったので4000円。20分をついやしてようやく半値以下にさせた。こちらは500円き

ざみで20分かかったのに、あちらさまは1万なんぼのものをあっという間に買ってしまった。

つくづく貧富の差を感じたアンモナイトであった。


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